【仕立てが違う】EGRETのスーツを縫ってくれている縫製工場へお邪魔してきました
オーダースーツEGRETの鳥形です。
先日の話ですが、EGRETのスーツ縫製をお願いしている工場が、新しい仕様を展開するという事でお伺いしてきました。時期が時期なので行くか迷ったのですが、お客様により良いスーツを提供するため、実際に作業風景を見ながら学んできました (飲食を控え、コロナ感染対策をしておりますのでご安心ください) 。
こちらの工場は、マシンメイドのオーダー縫製の国内トップクラスの工場といえば4つ名前が上がりますがその中の一つ。多くのテーラーがこの4つに技術的な差はなく、好みの問題だと言います。イタリアの柔らかく軽い仕立てで、綺麗なシルエットを構築するのが本工場の特徴です。
当店クラシコレーベルの工場として展開していて、日本屈指と言える素晴らし技術が詰め込まれている縫製工場です。
この時だけマスクを取っていただき、社長と営業担当の方にお写真を撮らせていただきました。服好きの匂いがプンプンしていますね (笑) 。
前回伺った際にも社長の想いを聞かせていただきましたが、無くなりつつある古き良き仕立てを若い方に受け継いでいきたいとおっしゃっていました。営業の方も私よりも若い二十代で、実際に縫製現場に入られています。実際に縫えるか縫えないかで説得力が違うので、私ももっともっと上手くなりたいと思い、修練に励んでまいります。
縫製の風景を写真とともに
全ての工程はないのですが、スーツが出来るまでの風景をご説明していきます。この撮影のさなか、EGRETのスーツもいくつか流れていました。
CADでパターンの線の繋がりをチェックしています。格好良いスーツを作るために大変重要な工程で、線の繋がりが悪いとサイズは合っているのに格好悪いなんて事になってしまいます。後は縫いにくいパターンになることも。
スポンジングという工程。生地は保管をしていると、地の目がいがんだり、伸びや縮みがでてきます。その歪みを元に戻して安定させるために、適切な湿度や熱、乾燥を通していきます。これをしないと、仕立て上がりが綺麗に出なかったり、型崩れして長く着用できないという事に繋がります。
CADの情報を裁断機に移行させて裁断します。この写真はマーキング作業です。
柄合わせチェックをおこなっています。通常、裁断は二枚重ねにしておこうなうので微妙に柄がズレている場合があります。それを手で確認しながら微調整していきます。ちなみに、この方は工場のInstagramの撮影も兼任されているそうです (笑) 。
イタリアの一部のテーラーを除き、縫製工場は分業制が基本です。前見頃の責任者がこちらの方。この時だけマスク外して笑顔くださいとお願いした写真です (笑) 。
前見頃と毛芯を据え付ける難易度の高い作業。ラペルの返りにもかかわる重要な工程です。
サイドベンツの額縁部分のアイロン作業。縫い代は少なければ少ないほど綺麗に作りやすく、カーブには切込みを入れたらアイロンが楽で簡単に速く作ることができます。反面、お直しが効かなくなるので長く着用するというスタンスからは離れていきます。できるだけ縫い代を多く取る工夫をされているので、お直しをする私からしても安心です。
レディースのパタンナー兼、縫製では本工場屈指の技術を持たれている方だそうです。
衿付け待ちの上衿パーツ。
ピックステッチという、ジャケットの顔といえるステッチを入れています。0.5mmでもズレると気になる繊細な工程です。
裏が汚いのが良い仕立て。そう揶揄されるのがスーツの裏地。生地にするスポンジングという工程に通じますが、表地は湿度により若干サイズが変わります (夏と冬でも若干の変化があります) 。なので、裏地は少しのゆとりを持たせて、ふっくらと据えるのが正解です。それを調整して手で縫っているのが写真の工程です。“再現性が低い”工程は熟練スタッフが担当しています。
細かな糸やゴミくずを取っている工程。
海外のテーラーからも依頼があるようで、季節が反対の某国からのコートを縫われています。
最終プレス。プレス機で行う箇所と、アイロンで行う箇所を分けてしっかりとプレスされていました。
プレスが終わると、ボタン付け。早い、綺麗、丈夫なボタン付けをされるお方でした。
そして、最後に社長自ら製品をチェックして当店眞配送されます。
一つ一つの工程が丁寧で、手間のかかり具合を改めて実感する機会になりました。また、顔が見える職人に作ってもらえるのは嬉しくなります。これからもEGRETのスーツの縫製をよろしくお願いいたします。
気になる仕上がりのスーツは???
こちらの写真は自分用にここの工場で仕立てたスーツ。腕を後ろに引いているので変なシワが寄っていますが、、、
お客様の実例はこれらのブログをご覧ください。
【お客様のオーダースーツ】SMITH WOOLLENS (スミスウールンズ) ボタニー
【お客様のコート仕上がり紹介】表情が良いポロコートはいかがでしょうか
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