【オーダースーツ】サイズの合った服 = “格好良い服”とは限らない3つの理由
オーダースーツはサイズがぴったり合うので着心地が良く、格好良い。
そんな耳ざわりの良い言葉をよく聞きますが、これ実はとてもレベルの高い話でして、、、サイズが合うからとイコール格好良いとは直結していきません。
本日のブログでは、サイズの合った服=格好良い服とは限らないというお話をしていきます。オーダースーツ作りのご参考にしていただけましたら幸いです。
サイズの合った服 = “格好良い服”とは限らない3つの理由
サイズが合っても、格好良い服になるとは限らない理由は大きく下記3つです。
・体型に合わせすぎる
・仕立てが悪い
・人によって格好良い定義が違う
・体型に合わせすぎる
オーダースーツは当然お客様の身体にサイズを合わせていきます。つまり、自分の身体を元にした洋服が出来てくるわけですが、、、
野球の大谷翔平選手みたいにスーパーマンのようなプロポーションをお持ちでしたら身体に合わせるだけで、何も考えなくても格好良いスーツが仕上がるでしょう。大谷選手まではいかなくてもスタイルが良い方もいらっしゃいますが、一般的にはそうでない方のほうが多いのが現実です。
私もそうですが、身長が高くなく胸筋があまりない格好良いとはいえない体型のまま作ってしまうと、格好良い服にはならない事はすぐに分かると思います。
開業当初、私もこんな失敗をしました。
その時お客様に言われた言葉が、
『オーダースーツって身体に合わせるので、お腹がでて見えますね』
この言葉は当時とてもショックで、、、
お腹周りがポッコリでているお客様のお腹に合わせすぎてしまい、仕上がりがあまり格好良いとは言えませんでした。その時はお直しをおこない修正が可能でしたが、採寸やバランスを取る事の難しさを感じました。
他にもお客様の怒り肩に合わせすぎて、地面に平行なくらい裃 (かみしも) のようなスーツも見たことがあります。
確かに身体に合わせて適度なゆとりがあるスーツは着心地が良いのは間違いないですが、それが格好良いかどうか?は別の話。
数ミリ、数センチのバランスの差で格好良いか、格好悪くなるかが変わってくるため、フィッターやカッターの役割は重要です。洋服として人が着用する以上、着心地を担保した上でいかに格好良くするか?が腕の見せ所でもあるのです。
常々、格好良くないと意味がないとお客様にはお伝えしております。
・仕立てが悪い
仕立ての良さはスーツの立体感に直結します。
仕立てが良い=着心地も向上していきますし、立体的なスーツは高級感、格好良さにも繋がっていきます。
仮に数値のサイズが身体に合っていたとしても、仕立てが良くないと着心地が悪かったり格好良く見えなくなります。
このブログでも度々仕立ての事で言及していますが、良い生地を使う事よりも、生地はそこそこで仕立ての部分に拘ったものの方が満足度が高いスーツになります。
これは日本製だから技術が高いというのも誤りで、下手に海外研修生ばかりの日本国内の工場を使うよりも、日本人が監修した中国製の工場の方がレベルが高い事が多いですし、韓国のスーツも非常にレベルが高いです。しっかりと物をみて判断をする目を養う事も大切です。
当店のスーツも30~60万円クラスのスーツと比べると仕立てが良いですとは言えない事が多いですが、10~20万円クラスのスーツの中では高い優位性を持っているため、ラルディーニやタリアトーレといったイタリア既製品ブランドを愛用されている方から特に評価をいただいています。
・人によって格好良い定義が違う
当たり前の話ですが、クラシックなフィット感、タイトなフィット感、どういうスーツを求められるかはお客様によって変わっていきます。
私が思う“格好良いスーツとはこういう物だ”という考えを持っていますし、シングルスーツでポケットを斜めにしたのにサイドベンツはおかしいとか、3Pで股上を浅くするとこういった問題点が起こるとか、クラシックとは何かをお伝えする必要はありますが、お客様と対話を重ねながら、“格好良い”を目指していかないと、仕上がったらイメージと違って『残念、、、』という結果になったという話も聞きます。
オーダースーツをあらわす、ビスポークという言葉が対話であるように、スーツ屋が独りよがりになることなく、一緒に作り上げていく姿勢が格好良い服を作り上げると考えています。
格好良い服を作るまとめ
いかがでしたでしょうか。
オーダースーツにおいて、身体にフィットさせるのも難しい事である上に、フィットさせたから格好良くなるというのはまた別である、という話をご紹介しました。しっかりとスーツ屋さんとコミュニケーションを取り、是非楽しいオーダースーツ作りのご参考にしていただければ幸いです。
本ブログの他にもマニアックなスーツ情報を書いておりますので、是非こちらもご覧ください。
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