高級生地を使えば、格好良いスーツが出来る?『結論:逆に悪くなる可能性もある』
ゼニア、ロロピアーナ、アリストン etc...
どれもイタリアを代表するブランド生地で、肌触りの良い光沢のある生地をメインで展開しています。所謂“高級生地”の代名詞といえるブランド群になります。
一般的な認識としては、
“高級生地を使用したスーツはとても格好良いスーツになる”
そう思われていませんか?
実はこれは危険な考えであり、高級生地を使った事が原因で“逆に格好悪いスーツになる”可能性も大いにあるという事を、本日のブログでまとめていきます。
高級生地の特徴
“高級”な生地には様々な定義があると思いますが、今回は高番手の細い糸を使用したイタリア生地に絞って話を続けていきます。
原毛 (繊維) や織り上げる糸を細くすることにより、光の反射が強まり生地自体の光沢感が生まれてきます。多くのイタリア高級生地ブランドが、Super表記で表される原毛の細さにこだわっているのはこの為です。
また、光沢には糸の密度も大切です。密度が低いと光の反射が弱まるからです。
光沢のある生地を作るためには、細い繊維の細い糸を使用し、高密度で織り上げることが重要になってきます。
高級生地を使っているのに何故、良いスーツが出来ないのか?
良いスーツの条件は、適切な生地を使い、適切な仕立てで適切なサイズである事です。
生地×仕立て×サイズ=良いスーツ
ゼニア等の高級生地は非常に美しい生地感を持つ反面、弱点があります。
それは、、、
仕立てが難しい事です。
スーツに使われる素材がウールであるのは、コットンよりもアイロンが効かせやすいので丸く綺麗に作りやすいからです。太い糸で (イタリア生地より) 甘く織られる英国生地が“仕立て映えする”のも作りやすいからです。
それが細い糸の高密度な高級ウールになると、薄く横伸びも少なくなり、立体的に仕立る難易度がグッと上がっていきます。洋服は多少縫製が綺麗でなくても、ある程度アイロンで誤魔化せたりする部分がありますが、それがしにくくなるのも高級生地です。
高級生地でスーツを作るのであれば、どうしたらよいのか?
技術のある仕立てが必要不可欠です
料理に例えると生地が食材であれば、仕立ては料理人です。
高級な食材であれば、三ツ星シェフの手にかかった方が良い料理が出来る可能性は高まります。
当店で提携している工場は現在3か所 (カスタム・ラグジュアリー・クラシコ) ありますが、超高番手の高級生地 (ゼニアの15ミルミル等) を使われるお客様には一番上質なクラシコの仕立てをお勧めしています。
カスタム、ラグジュアリーレーベルの工場でも悪くはありませんが、目の肥えたお客様にはやはり先述の工場の方が満足度が高いです。
その時々において求めるスーツが違う事もあり、当店では工場を使い分けてお仕立てしています。気軽にラーメンが食べたいときもあれば、フレンチを楽しみたいときもありますよね。フレンチが嫌いな人もいますので本当に人それぞれです。
EGRETではどういう仕立てになるのか?
日本国内には東京のチッチオさんであったり、フランス在住の鈴木健次郎さんであったり、尊敬すべき素晴らしいスーツを作っているお店があります。
彼らの1着100万円近いスーツは色気があってとても格好良いです。
そういったスーツに洋服としてのクオリティで勝つことはできませんが、当店が得意な事は、型紙や仕立て面における拘りをしっかりと持ち、この兵庫県姫路市において“質実な満足度の高いスーツをお作りできる事”です。
また、当店のクラシコレーベルを縫ってもらっている工場はパターンオーダーにおいて国内三指の技術を持っています。この工場を使用しているスーツ店と比較して、108,900円 (税込) ~という低い価格設定は、中間業者や宣伝広告費、姫路市という立地で固定費を最小限に抑えた賜物です。
ラルディーニや、タリアトーレといったクラシコブランドがお好きな方には特に、EGRETのスーツの優位性を感じていただいています。
高級生地を使う際の注意点まとめ
やや脱線してしまいましたが、、、
結論、高級生地を使われる際は“お仕立て”にもこだわりを持っていただいた方が満足度が高くなります。
ゼニア、ロロピアーナといった高級生地ブランドのタグが付いた“だけ”のスーツはあまり格好良い物ではありません。高級生地の名前に見合ったスーツ作りを意識していただけましたら、より良い物ができるかと思います。是非ご参考にしていただけましたら幸いです。
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