『播州織り』植山織物株式会社様の工場見学へ行ってきました
姫路のオーダースーツ店EGRETの鳥形です。
播州織り
って聞いたことがありますか?
播州は兵庫県南西部の地域の事で、当店EGRETがある姫路も播州地域です。
播州には先日ご紹介した革の名産地があるのと同時に、この播州織りも繊維産業として活躍しています。
この度、播州織りの工場見学をさせていただき、学んできましたのでブログにてご紹介させていただきます。播州織りについて、少しでも理解が深まり、播州織りを好きになっていただけますと幸いです。
ちなみに、姫路の革についてのブログはコチラをご覧ください。
レザーの黒ダイヤと称される姫路黒桟革 (ひめじくろざんがわ) のオーダーシューズ
播州織りとは?
播州織りは、兵庫県西脇市を中心とした地域で生産される織物です。この地域には加古川・杉原川・野間川と3つの川が流れており、先染織物 (糸の段階で染める織物のこと) を生産するために必須の条件である、“綺麗な水”が存在しています。スーツ生地で有名なイタリア、ビエラ地方も水が綺麗な地域なので、良い生地には良い水という事ですね。
そんな播州地域による繊維業は全国シェアを過半数以上占めている先染織物一大産地で、世界のラグジュアリーブランドからも支持されています。見学させていただいた植山織物株式会社の生地も、●●●●●とか●●●●●●●●●●●●等、ラグジュアリーブランドが使用していました (どこのブランドかは契約の関係で公表してはいけないそうなので、伏字にしておきます笑) 。
表に名前が出てこない事も多い播州織りなので、実はこんなところにも使われていた!という事が多々。ファッション業界を下支えしている素晴らしい生地産地です。
植山織物株式会社
植山織物は、フォーブスに賞をもらったり雑誌掲載も多い注目企業。播州織りを直に感じていただけるよう、ファッション学生や地域の小中学生の工場見学受け入れにも積極的に取り組んで貢献されているそうです (素晴らしい) 。
播州織りに限らず、繊維産業、アパレル産業需要は下がってきています。いかに特色をだして安い海外製品と競争していくか?、こだわりを突き詰めていくか?が大切だと代表の植山社長が語られていました。
生地メーカーは完全分業なのが一般的ななか、植山織物はサイジングから織布までできる稀有な存在です。
糸の仕上がりから、チーズと呼ばれる64kmの糸の長さを巻き付けた物、柄をいかにして作りあげていくか、詳しく解説いただきました。
経糸にカム、ドビー、ジャカード、横糸の織り方にシャトル、レピア、エアー等あり、植山織物はそのほとんどに対応している工場です。この織機の違いでどう生地が変わっていくかが下記。
これがシャトル織機と、エアー織機の仕上がりの違いです。
一見同じように見えて、、、シャトル織機のほうが空気がはらんだようなふくらみ、表情が生まれています。最初全然わからなかったのですが、触ってみて分かりました。どういう生地を作るかによって、このように織り方を変えていきます。
植山社長とこだわり生地のシャツ。普通に織ると固くなりやすいところ、植山織物の技術によりふくらみを持たせたコットンを仕上げることができ、ヴィンテージのような風合いを持たせています (製品後に破れなどの加工もおこなったそうです) 。古着などの風合いが好きな方はこの質感がたまらないのではないでしょうか。
実際の制作現場へ
これだけの量をストックされているシャツ生地工場は珍しく、私達スーツ屋からしても有難い存在です。
糸の並びを調整されている従業員の方にもお話を伺いました。コンピューター制御とはいえ人が関わる箇所もあり、1つでも間違えていたら大変なことになる細かい作業です。
ここまでの写真で経糸のセッティングが完了。続いて経糸をはったものに横糸を通していく工程に進んでいきます。
写真中央あたりに、青っぽく写るシルバーの金具が大量にありますが、これ一つひとつに経糸が通っています。数でいうと5000本程度 (!!) 。
経糸が切れると警告のアラームがなるそうなのですが、繋ぐ作業が大変でどこが切れたのか探すところから始まります。細かい、、、。
植山織物はサステナビリティにもこだわられ、オーガニックコットンの推進や、働きやすい環境を作るため作業者の足腰に優しい木の床を取り入れているそう。SDGsはこれかの企業に欠かせない部分なので、当店も見習いたいところです。
これが中盤でも登場していた昔ながらのシャトル織機。一枚目写真中央、二枚目写真下のハンマー部分でシャトルを打ち出し横糸を通していきます。ガシャンガシャンと小気味良い音が工場に響き、これがふっくらとした風合いを作り出すと思うとワクワクしますね。
ご縁があり、見学させていただいた播州織りの工場。
姫路のオーダースーツ店EGRETでは縫製工場とも打ち合わせをおこない、播州織りを使ったシャツをお作りできるようになりました。
洋服屋である以上、職人の素晴らしいこだわりを、格好良い洋服としてお仕立てしていければと思っています。取扱いの播州織り全てではありませんが、オーガニックコットンを使用したサステナビリティな素材もございます。姫路市に根付いた洋服屋であり続けたいと考えておりますので、是非ともよろしくお願いいたします。
播州織りのオーダーシャツが気になられた方は是非お問い合わせいただけますと幸いです。
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