【BESPOKE】新たな職人との取り組みを開始しました。

姫路のオーダースーツ店EGRETで、以前より水面下で準備を進めていた、新しいビスポークラインについてブログにしていきます。
18歳から服飾の学校でパターン、縫製を学び(デザインも少しだけ)、毎年何百着という長年スーツに携わっており、数えきれないほどの洋服を見てきた私ですが、今回縫製をお願いすることになった職人が仕立てた一着には震えました。
それは単に縫製が上手く、見た目が綺麗という枠を超えて、10年よりさらにその先、何十年と共に歩んでいけるような感覚が、洋服の設計から伝わってきたからです。
今回は、私が惚れ込んだこの職人の技術と、EGRETがこのラインを始める理由について、少しマニアックな視点も交えてご紹介します。
技術力の高いと美しいイセ込み

まず袖を通す前に目を奪われたのが、肩周りの美しさです。 ジャケットの着心地を左右する首から肩にかけてのライン。ここには洋服を立体的にするためのイセ込みという手法が使われます。
イセ込みが多いというのも、膨らみを見て伝わってくるかと思いますが、これだけの分量を綺麗に入れるのは高い縫製技術が必要になってきます。袖付けなどの縫製は私でもできますが、この綺麗さは到底できません笑。

控えめに曲げている、と言われていたバルカポケットの収まりも非常にキレイです。もっと曲げられますよ、と言われたのは自信の表れかと思います。

手で据えられた裏地。裏地同士を縫うのは、ミシンのほうが耐久性が上がり良いですが、柔らかく据えるのはハンドだからこそうまくいきます。


後ろパンツを上げていく仕様、ハイバックもうまく出来る職人は限られてきます。特に三つ揃いにする際などは、ベストの丈を短くするためにも股上は高くしたいもの。このハイバックでは、お尻からウエストにかけてのカーブに対応しやすくおさまりが良くなります。これも控えめな2cmと言われていましたが、5、6cmとさらに高いハイバックもお作りが可能です。
お直しもしているEGRETだからこそ気づく見えない場所のこだわり

そして、私が何より嬉しく、思わずニヤッとしてしまったのが、縫い代の多さです。
当店のオーダー品でも多くの縫い代を残しておりましたが、この職人の洋服にはそれを上回る量の縫い代が残してあります。例えば背中心などは、5cm近くも残されています。これは一般的なMTM(パターンオーダー、イージーオーダー)と比較すると倍近い分量です。
これは何を意味するのかというと、体型が変わっても、何度でもお直しをして着続けてほしい、という職人からのメッセージではないでしょうか。
当店はお直しも店頭で行っているため、この余白がいかに重要で、かつ贅沢なことかが痛いほど理解しています。
数十年体型を変えないというチャールズ国王のようなストイックな方ばかりではございませんので(私含めて笑)、お直しが効きやすいのは嬉しいですね。
MTM、ビスポークという2つの選択肢
これまでEGRETでご好評いただいているMTM(カスタム・クラシコライン)も、高い技術力を持ち素晴らしいスーツであり、自信を持ってお勧めできるものです。
私自身着用しているもののほとんどは、クラシコラインで作成したスーツです。
その上で、今回のビスポークラインは、効率や時間を度外視してでも、職人の手仕事や伝統的なディテールを極めたい、一生ものに近い長く付き合える一着が欲しい、そんなさらに深いこだわりをお持ちのお客様へ向けた、特別なご提案としてご用意しました。
ぜひ一度、この素晴らしい技術力を店頭でもご体感ください。
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