より快適で、美しいスーツを目指して。信頼する工房と新モデルの打ち合わせを行いました。

先日、EGRETのスーツを手がける工房のひとつを訪れ、新しいMTM (メイド トゥ メジャー) モデルに関する打ち合わせを行いました。
こちらの工房とは、かれこれ5年ほどのお付き合いになります。初めてお会いしたのは、柔らかい雰囲気を持ちながらも、ものづくりに対しては非常にストイックな職人気質を感じさせる方と出会ったときのことでした。以降、当店のこだわりを理解し、形にしてくれるパートナーとして、スーツづくりに欠かせない存在となっています。
今回の打ち合わせでは、今後展開していく新しいMTMモデルについて、細かな仕様の確認や方向性のすり合わせを行いました。
新モデルでは、ネックを起こしお行儀が良く (既存モデルがお行儀が悪いというわけではありません 笑 )、これまで以上に腰回りのフィット感を重視した構築感になっています。シルエットは、ナポリやフィレンツェのような柔らかさよりも、より端正で中庸な佇まい、イタリアで言えばミラノに近い、控えめな華やかさと構築的な美しさを併せ持つ雰囲気を意識しています。
また今回、パンツの「クセ取り」についての意見交換を行いました。より丸いシルエットを作ることに欠かせないクセ取りとは、縫製前に生地にアイロンをかけ立体的なフォルムを作る下ごしらえをすることです。パーツとパーツを縫い合わせるとその部分は立体になりますが、何も縫い代やダーツがないところは平面的になります。お尻下には縫い代が無いため平面的になるところ、股部分の縫製部分にある立体感をアイロンでお尻下まで移動させてくるイメージです。
これによりフィット感が増し、美しく身体に沿うようになります。
「どこまでの丸みを作るのか」「どういう体型の人に合うのか」こうした細部の考え方こそが、着心地の差を生むポイントでもあり、職人との認識合わせが欠かせません。実際に仕上がったスーツを手に取りながら、「この丸みは活かす」「これはもう少し抑える」といったやり取りを行う中で、当店が理想とする自然で品のある立体感が、より明確に共有されていきました。
お客様に「着た瞬間にわかる気持ちよさ」を感じていただける一着を目指して、EGRETではこうした現場との対話を大切にしています。技術だけではなく、人の手と心でつくられるスーツの良さを、これからもお届けしてまいります。
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