【目付330~400gのスーツ生地集】秋冬寄りな3シーズン生地はタフに扱え、初オーダーにお勧めです。
少し前の日経経済新聞で、“Super100や100双 服の生地、数字が大きいほど高級?”という記事を目にしました。Super100'sはウール繊維の細さ、100双はシャツに使われるコットン糸の太さをあらわしています。要約すると細い繊維や糸を使ったものは高級であるというものでした。
確かに、光沢が出しやすく肌触りが良いといった特徴が「高級」の基準であれば、Super表記の値が高いものは高級と言えるかもしれません。しかし、「高級な繊維=必ず良い服」というわけではありません。実際、縫製する側から見ると、細い糸で織られた生地は縫いにくいことが多く、工房によっては太い繊維や糸を使用した生地の方が、結果的に良い服になる場合もあります。
さらに、服は身にまとうものであり、生活の中で使われるものです。ダイヤモンドのように光り輝くことが必ずしも良いとは限りません。タフに扱えることが求められる場合、細い繊維は脆さの原因となるため、太い繊維や糸を使用した生地 (記事で言うところの「低級」とされる生地 )の方が適していることも多いです。
結局のところ、生地の良し悪しは用途や使い方次第です。Super表記の値が高いからといって、自分にとって最適な生地とは限らないことを意識することが大切です。
さて、本日はどハリコシのある厚めのスーツ生地を、シリーズ毎にご紹介します。目付は330~400gのもので、初夏から晩夏の着用は暑さを感じるものが多いですが、それ以外の期間においてタフに扱っていただけ、かつ長年にわたる着用をしていただける名作服地の数々です。こういった秋冬寄りな3シーズン生地は扱いがしやすく初めてスーツを作られる方にも、EGRETで特にお勧めしているシリーズです。
OYSTER 目付400g
厚めのスーツ生地を提案してほしいと言われれば、EGRETでご支持いただく方の多いHARRISONS (ハリソンズ) のOYSTER (オイスター) 。このブログでも擦り切れるくらいにご紹介しています。英国で伝統的な糸の太さである48番手双糸で織られた目付400gの生地は、ハリコシがあり打っては響くような王道の仕立て映え生地です。
ストライプや、ネイビーのバリエーションが多いのも特徴のひとつです。
LUMB'S GOLDEN BALE 目付330g
続いてご紹介したいのは、世界一のスーツ生地だと称する仕立て屋も多い、H.LESSER & SONS (エイチレッサー) のLUMB'S GOLDEN BALE (ラムズゴールデンベイル) 。
目付330gのスーツ生地のシリーズは、サージやシャークスキン、ヘリンボーンといった奇をてらわない色柄だからこそ気品を感じさせる質感です。写真ではなかなか伝わらいのが残念です...
BOTANY 目付380~410g
HARRISONSのOYSTERと兄弟のように似ているクオリティが、SMITH WOOLLRNSのBOYANY (ボタニー) です。
PREMIER CRU 目付330g
PREMIER CRUは、オーストラリア ビクトリア州産のメリノウールを3度梳いた後に残った長い原毛のみを厳選する拘りを持ち作成されています。Super100'sと表記されていますが、72番手双糸で打ち込みを強くし、滑らかさとコシの両立がなされています。
QZ2 目付340~360g
極細繊維を使いながらもあえて糸を太くして織り上げた英国服地がHARDY MINNIS (ハーディミニス) のQZ2です。
GLORIOUS TWELFTH 目付340g
カントリー服地を得意とするPORTER & HARDING (ポーターアンドハーディング) のスーツ生地、GLORIOUS TWELFTH (グロリアス・トウェルフス) 。ツイードにみられるようなデザインをスーツに落とし込みされ、華やかなものが多いですがオンタイムのスーツにも活用いただける生地が展開されています。
いかがでしたでしょうか。巷では薄くて柔らかいものに注目が集まる傾向が強いですが、EGRETでは分厚くしっかりしたものを好まれる方が増えてきたように思います。長きにわたる相棒としてのスーツとして、特にお勧めしているシリーズの数々ですので、是非店頭でもチェックしてみていただけると幸いです。
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