ジーンズを新しく買おうと思ったが、シックリこなかった話。
カジュアル化が進む現代では、業種にもよりますがビジネスの場であってもジャケパンOK、ジーンズOKという職場もあられると思います。私服ではジャケパンなことが多い私も、ジーンズは数本持っていて、視野を広げる意味でも、他社店舗様の既製品を購入させていただくことがあります。
本日はジーンズを新しく買おうととある店で試着してみたのですが、シックリこなかったというお話。その理由を知っていただくと今後のパンツ選びのご参考になるかと思いますので、是非最後までご覧ください。
寝ているか、起きているか
とある休日、YouTubeかSNSか何で見たかは忘れましたが、ジャケットと某メーカーのジーンズを合わせていたスタイルが素敵で、試着しに行きました (初めて買うブランドは現物を見たい派閥の人です) 。
現物のジーンズは色落ちや質感も良く、股下も選べるという (足が短い私には) 嬉しいサイズ設計。
意気揚々と合わせてみたのですが、、、あまりしっくりきませんでした。股上、股下、裾幅といった数値は悪くないのですがシックリこない。この違和感は前ボタンを留めるときに薄々感じていました。
『パンツが寝ている。』
ジーンズなので当たり前なのですが、普段“起きている”パンツばかり履いていたのでこの感覚を忘れていました。
上が今回試着しにいったものとは別の私物のリーバイス501で、下が店舗にあるサイズサンプルのスラックス。
見ていただきたいポイントは前股上の傾斜。501の方は脇に向かって傾斜が強くでていて、スラックスはほぼ傾斜がありません。501は寝ているパンツ、スラックスは起きているパンツです。
傾斜が付いているので、ボタンを留めず平置きするとVの字状に開きます。
このパンツを履いて正対すると、股の付け根部分からVの字状にシワが入ります。
欧米の方のように、ウエストとヒップの差寸が大きければ収まりが良くなる可能性もありますが、極々平凡な日本人体型の私のスタイルでは余りが出てきてしまいます。
このシワは開脚をすると綺麗に無くなります。つまり、寝かせたパンツは、足を開くことを想定した型紙であるということです。
このシワが気になってしまい、手持ちのジャケットに合わせるのにはシックリきませんでした。
ジャケットに合わせるのであれば、このような起きた型紙を使ったジーンズの方が相性が良いです。袖山の低いブルゾンや、オーバーシャツといった動く事を想定したものと合わせるのであればシックリきたのかもしれませんが、運動量を制限させた一般的な袖山のジャケットと合わせると調和がとりにくいように感じます。
もちろんファッションには自由な部分があります。学生時代、私の好きだったデザイナーエディスリマンもタキシードにダメージジーンズを合わせていました (今見ると寝かせ気味の型紙でした) 。こういったコーディネイトがダメなわけではなく、クラシック路線からは外れてくるため、違和感がでたという話でした。
ジーンズを選ばれる際には寝ているか、起きているか、型紙の部分を意識していただくと洋服に対するこだわりも増していくのではと思います。こだわりが増えると装う楽しさも一層増えていくと考えておりますので、ご参考にしていただけましたら幸いです。
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