スーツの小ネタ - 【目付300g縛り】2025年春夏に着たい分厚めな生地を6つのメーカーからご紹介します。

2025.02.20 【目付300g縛り】2025年春夏に着たい分厚めな生地を6つのメーカーからご紹介します。

生地の織り方には、大きく分けて綾織りと平織りの2種類があります。綾織りは生地に光沢と滑らかさを与え、平織りは強度と通気性の良さが特徴です。スーツ向けの生地では、平織りは春夏用として制作されることが多く、生地も薄手のものが一般的です。生地の重さ(≒厚さ)を表す目付は、春夏用では250g程度が主流となっています。

今回特集するのは、目付300gと秋冬生地並みの重さを持つ平織り生地です。店主自身がこれまでに50着以上のスーツやジャケットを仕立て、さらにお客様からのフィードバックを得た経験をもとに、2025年の春夏スーツとしておすすめしたいクオリティの生地の数々です。夏限定であれば250g程度の軽いものが適していますが、春から秋まで長く着用することを想定するなら、300gの平織り生地は優れた選択肢となります。長年の着用に耐えうる丈夫さと、職人が縫いやすい厚めの生地は仕立て映えしやすくなります。

こちらはブログの最後に紹介するFOX BROTHERS (フォックスブラザーズ) のFOX AIR (フォックスエアー) で仕立てた店主愛用のスーツです。半裏仕立てで、夏にも快適に着用できるお気に入りの一着です。

それでは、国産から英国製まで6つのメーカーを順にご紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください。

JAPAN WOOL

まずは国産の生地から。一般的に2本×2本の経緯双糸で織られることが多い中、この生地は4本の糸を撚って織り上げた4PLYの生地です。手をかざすと若干の透け感があり、今回紹介する中では最も重い330gです。(300g縛りといいながら、さっそくオーバーしてしまいました、すみません笑)

強撚糸という、糸に強い撚りをかけることでシャリっとした清涼感のある質感が特徴です。また、防シワ性にも優れています。

デザインとしては、無地やウインドウペン、さらには珍しいシャドーグレンチェックなど、ビジネスシーンでも使いやすいバリエーションが揃っています。

WOODHEAD

続いて、日本企画の英国服地ブランドWOODHEAD (ウッドヘッド) より、目付300gの強撚糸生地をご紹介します。手をかざすと透け感がありますが、平織りの強度により、ヘビーユースしやすいのが魅力です。シワに強く、汗をかいてもベタつきにくい点も嬉しいポイントです。

糸が太いため、同じ無地でもざっくりとした風合いになり、より春夏らしい印象を与えます。

WILLIAM HALSTEAD

目付300-320gのWILLIAM HALSTEAD(ウィリアム・ハルステッド)のハイツイストウール。目付に20gの幅があるのは、生地を織る際に均一に仕上げるのが難しいためです。無理に重さを揃えて生地の風合いが損なうより、ある程度の誤差を許容するという考え方によるものです。

同じ英国製の強撚糸の生地でも、糸の太さや打ち込み具合によって印象が変わるのが興味深い点です。WILLIAM HALSTEADらしいクラシカルなグレンチェックやハウンドトゥース、無地のバリエーションも豊富で、さまざまなスタイルのスーツが作れます。

SMITH WOOLLENS “ABACUS”

今年リニューアルされたばかりのSMITH WOOLLENS (スミス・ウールンズ) のABACUS (アバカス) 。SMITH WOOLLENS独自の「サハラフィニッシュ」により、ドライで軽やかな質感が特徴です。

モダンなデザインもありますが、無地やピンチェックなどクラシカルな生地も豊富に揃っており、普遍的なスーツ生地としておすすめできます。

HARRISONS “FRONTIER”

今回紹介する6つの生地の中では、最も細い原毛を使用し、強い打ち込みで織り上げたHARRISONS (ハリソンズ) のFRONTIER (フロンティア) 。目付300gで、上品な質感が特徴です。

私自身もネイビーの無地の三つ揃いスーツを仕立てましたが、取引先の工房の方々からの評判も良く、艶っぽくなりすぎず、落ち着いた雰囲気に仕上がりました。

生地のラインナップは、無地のカラーバリエーションから、オーバーペインの入ったプリンス・オブ・ウェールズチェックまで多彩。クラシックとモダンのバランスが取れた、美しい生地が揃っています。

FOX BROTHERS “FOX AIR”

フランネル生地の代名詞とも言えるFOX BROTHERSが手掛ける春夏の名作、FOX AIR。私も愛用しており、仕立て映えの良さと扱いやすさを実感しています。

カントリーな雰囲気のあるデザインも多いですが、ビジネスユースには無地やハウンドトゥースがおすすめ。オッドジャケットやオッドトラウザーズとしては、ガンクラブチェックやブラックウォッチも素敵な選択肢です。

いかがでしたでしょうか。今回は、私の大好きな目付300gの厚めの春夏服地をご紹介しました。ぜひ店頭で実際にご覧になって、質感や風合いを体感してみてください。