スーツは、選ぶ楽しさから。EGRETの5つのMTMモデルのご紹介

EGRETでは一から型紙を起こし、手縫いやクセ処理を存分に活用して仕立てる、所謂フルハンドメイドオーダー「E90」をご用意しています。職人による手仕事の積み重ねを、まとうように味わっていただける特別な一着です。
それとは別に、より多くの方にオーダーの楽しさを体感していただけるよう、EGRETでは5種類のMTM(メイド・トゥ・メジャー)モデルをご用意しています。MTMとは、日本ではパターンオーダーやイージーオーダー、セミオーダーなど様々な名称で呼ばれていますが、要はベースの型紙があり、そこから修正をかけていくという手法のオーダーのことです。
オーダー店によっては袖丈や着丈しか変更ができない場合もありますが、当店の場合は体型補正を含めた多くの修正を加えることができます。オーダースーツと一言でいっても、内容はそれぞれですので、中身の部分を知ることが大切になってまいります。
MTMもすべて国内の熟練工房と連携し、モデルごとに異なる設計・構築の考え方に基づいて仕立てています。大切にしているのは、ただサイズを合わせるのではなく、「その人にとって心地よく、自然体でいられる一着」をご提案すること。
本日は、E30からE70までの各モデルの特徴をご紹介いたします。手の込んだ洋服は、いかに平面の布を身体に沿う立体に仕上げるかに重きが置かれています。Eの後の数値が大きくなるたびに、より丸いシルエットをご体感いただけるよう設計しました。
E30
初めての一着として選んでいただきやすい、EGRETのエントリーモデル。以前までのパターンを改良し、腕が20%上げやすく、動きやすくなりました。軽やかさと構築感のバランスにも優れていますので、「まず一着、オーダーしてみたい」と考えている方にぴったりのベーシックなモデルです。
生地選びによってカジュアルにも、きちんとした装いにも対応できる柔軟さも魅力。あまり肩肘張らず、気軽にオーダーを楽しんでいただける一着です。
E50
程よく力を抜いたクラシックなシルエットで、柔らかな着心地を感じていただけます。E70C(クラシコ)の構造をベースに、芯地や副資材を少し軽やかに調整しています。クラシックなスーツとはどんなものなのかを感じたいと考えられている方に、まずは着ていただきたいモデルです。
肩まわりの構築を軽くすることで、見た目は正統ながら、日常でも疲れにくい設計に。初めてクラシックモデルに挑戦される方にもおすすめです。
E70|Classico (クラシコ)
EGRETの中核を担う、重厚感のあるワイドラペルと構築的に包み込むような肩回りが特徴のE70 クラシコモデル。クラシックなスーツの魅力を体現し、格式の高いフォーマルシーンにも安心してお召しいただける美しさを持ちます。
胸の立体感やラペルの角度、ボタン位置なども綿密に調整されており、伝統的でありながら現代的なバランスを持った完成度の高い一着です。
E70| Napoli (ナポリ)
クラシコモデルを改良し、ナポリの仕立てを意識した裾まで続くフロントダーツによって、腰回りの美しい立体感を表現しています。イセ込み量を増やし、柔らかな肩回りと、肩から首にかけては優美なノボリを実現させています。
ナポリの軽やかに羽織れる感覚と、どこか色気を感じさせる柔らかさが魅力。シャツ袖 (マニカカミーチャ) との相性が良く、独特のニュアンスあるスーツをお仕立てしていただけます。
E70|Firenze (フィレンツェ)
洋服好きの方に支持される、E70 フィレンツェモデル。フロントダーツを省き、脇と後身頃の接ぎ部分で緩やかなカーブを構築しています。適度にゆとりをもたせ、低く流れるようなゴージラインは、力の抜けたスタイルを好まれる方にお勧めしたいモデルです。
着る人の動作に自然と馴染むような柔らかい設計で、あえての余白を楽しむスーツとも言えます。趣味性のある一着をお探しの方にも。
いかがでしたでしょうか。モデル名は新しくなりましたが、EGRETの想いは変わりません。「お客様史上、最高の装い」をご提案すること。それぞれのモデルに、それぞれの心地よさがあります。
「どれを選べばよいか分からない」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。体型や用途、お好みの着心地に合わせて、じっくりとお話を伺いながらご案内させていただきます。
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