【スーツの小ネタ】ジャケットの袖口からシャツを覗かせる事が全てではない件について。
4日間店舗を休み家族旅行でリフレッシュしてまいりました。本日より営業再開しておりますので、ご来店お待ちしております。
さて、本日はスーツの小ネタ。
YOUTUBEやSNSを見ていると、これがスーツのマナーです、ルールです、と啓蒙されているのをよく目にします。玉石混交ですし、考え方は人それぞれです。店主としてはがちがちにルールやマナーに拘り過ぎず、(ビジネスにおいては相手に失礼が無い範囲で) 楽しく、気分良く洋服を着用されるのがよろしいかと思っております。
オーダーでスーツを作られる場合においても、ルールばかり意識してしまうとかえってバランスの悪い洋服になってしまう場合があるので注意が必要です。
ルールやセオリーに捉われ過ぎない
スーツのルールやセオリーとして、“ジャケットの袖口からシャツを少し出そう”というものがあります。ジャケットの袖口からシャツを出すことによって、ジャケットの袖口が汚れにくい事や、シャツが見える事によりメリハリが視覚的に生まれる事は利点に挙げられます。
私も自身のスーツは着用して正体した際にシャツが少し見えるように袖丈を設計しますし、ある程度普通体型の方は同じような考えで洋服をおつくりします。しかし、これを全ての方に当てはめるのは危険です。
画像引用:cloudfront.net/
まず、シャツを出そうというルールの出自自体が曖昧です。左のチャールズ国王はカジュアルなコットンスーツを除き、基本的にはジャケットの袖口からシャツを出していますが、右のウィリアム王子は袖口からシャツが見えない長さです。ラペルの細いモードな雰囲気のスーツだからではなく、他のスーツの写真を見ても同様の長さなので何かしらの意図が伺えます。着こなしに厳しいロイヤルファミリーですらシャツを見せなくて良いのですから、厳格に守るべきルールでなく、趣味趣向の範疇を超えない部分だとも言えます。
加えて、チャールズ国王の袖口にも注目です。
シャツの袖丈のセオリーの一つに、手のひらを地面に対して平行に曲げて、シャツのカフスが掛かる位置というものもありますが、それよりも気持ち長く設定されています。これには、いくつかの意図があると思いますが、着丈のバランスに対して袖丈が短くなりすぎないように設計したのではないかと考えています。
恰幅の良いチャールズ国王が短い着丈のジャケットを着ると、全体に丸いシルエットとなります。基本的に縦長の洋服にした方が、視覚的にスタイル良く見えますので、それにのっとった長い着丈のスーツに対して、短い袖が付いているとバランスを崩します。身体に合ったスーツが格好良いとは限らないとはこのことです。
小柄で恰幅の良い方は腕が短いことが多いのでお尻か隠れる着丈にして、シャツを見せる袖丈にした場合、上手くいくこともあれば、バランスを崩す事もあります。
姫路のオーダースーツ店EGRETでは、お客様の拘りをもと格好良い洋服となるようお仕立てしております。ルールにとらわれ過ぎず、楽しく装いを楽しんで頂けるお手伝いができますと幸いです。
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