クラシコレーベルの縫製をお願いしている工房と定期ミーティングを行いました。~手縫いの妙~
姫路のオーダースーツ店EGRETでは、工房ごとに3つのレーベルを分けており、どのようなスーツをお作りされたいかに合わせてお客様にはお選び頂いています。それぞれの工房と密にコミュニケーションを取ることでより良いスーツをお客様にご提供することに繋げています。
先日行ったクラシコレーベルの縫製をお願いしている工房とのミーティングは、実りある内容になりましたので、その素晴らしい手縫いの妙をご紹介させていただきます。
手縫いの妙
ジャケットの顔であるVゾーンはラペルと上衿によって構成されています。上衿の縫製は首の吸いつきに欠かせない技術のいる工程です。首にしっかりと吸いつくことにより、着心地の上昇に繋がり、ご自身にあった良いスーツは動いても首から上衿が離れません。主にレディースの着こなしで、わざと衿を抜くものもありますが、クラシックなメンズファッションではタブーです。
通常の縫製でも首の吸いつきが良いクラシコレーベルですが、さらにフィット感を高める“本衿掛け”という手法があります。裁断したものにクセ処理を行い成形し、地衿、上衿と手縫いで被せていくものです。手縫いの良さは立体感と、融通の利きやすさですので、より良い仕立てを追求する際にご活用頂けます。
この上衿とラペルの接ぎ目をゴージラインと呼びます。ミシン縫製であれば曲線にすると無理がきてしまうため、直線で構成されますが、本衿掛けであれば写真のように綺麗にカーブを描き見た目にも美しいものとなります。
見た目で言いましても、チェック柄等であれば横地の目が通っていますのでチェックが切れる事がありません。
イセ込み量を増やした袖付けで、マニカカミーチャ仕様ならではの雨降らし具合も美しいです。
パンツの脇尾錠を手かがりした仕様。細かな手縫い具合を増やしていく事で、雰囲気がより良くなります。
MTMサンプルを着用してニッコリの私。袖丈だけ直したらそのまま着て帰れそうなくらいに完成度が高いです。通常ラペルが返り始める位置は、段返り三つボタンであれば真ん中のボタン位置が基本ですがこちらはさらに下に設計されています。ボタンを外した際は特に迫力のある表情で、イタリアは特にナポリの洋服の匂いがします。
6月頃からスタートさせるMTMブルゾン。柔らかい印象の出るラグラン仕様で、生地によってガラッと違う雰囲気を作り出す事ができます。カーキがウールギャバジン、ホワイトがリネン、ネイビーがカシミヤです。
これからも長くご愛用頂いても色褪せないクラシカルなスーツをご提供してまいりますので、姫路市で拘りのスーツをお考えの際には是非一度お問い合わせいただけますと幸いです。
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