【フォーマルウェア】礼服を作る際の生地選びについて。黒の深さに拘る?
EGRETはビジネス向けのスーツから、カジュアルに着用できるジャケット等幅広いご要望にお応えできるオーダー店です。ご普段スーツを着用する機会が少ない方であっても大切なシーンの洋服は拘りの洋服にしたいという方も多く、フォーマルウェアとして“礼服”のご依頼は当店の得意としている所でございます。
フォーマルウェアの中ではモーニングとテールコート (燕尾服) が最も格式高く、続いてタキシードとディレクターズスーツとなり、次に礼服が当てはまります。
スーツの本場、英国では礼服のところにダークスーツが当てはまります。故エリザベス女王の葬儀でもミッドナイトネイビーの無地のスーツを着用されている方がほとんどでした。戦後一般に浸透した礼服は日本独自の洋装であり、文化とも言えます。
礼服生地の黒の深さ
礼服に使う生地は黒の深さに拘るというのがセオリーです。同じ礼服を着用した際に、より深いものが礼服には適しているとされています。
この写真の生地はイタリア製のものでディープブラックと名称がつけられており、一般的な黒の生地よりも色合いが深く、それでいてイタリア製らしいきめ細やかな質感が特徴です。十数センチ角の生地であっても実際に見てもこの生地の美しさが伝わるかと思います。
しかし、この右側に写った日本の黒い生地と比較すると黒の深さという点ではかなりの差が出ています。そもそも海外では黒いスーツを着る方が少ない上に、黒の深さに拘る事の重要性も無いため、深さに拘った日本製の生地と比べると一目瞭然です。イタリア製のものもディープブラックという深い黒なので、一般的な海外の黒い生地であればこの差はさらに広がってきます。
冠婚葬祭全てを意識した礼服を作るのであれば、日本製の生地で間違いがありません。
対して、葬儀を除いたお祝い事に使われたいブラックスーツであれば、イタリア・英国製の生地も候補に挙がってまいります。慎ましい印象の日本製礼服生地に比べて、華やかで質感も美しい生地です。
礼服以上のタキシードやディレクターズスーツ、テールコートやモーニングで正式なものをお考えでしたら、SMITH WOOLLENSのコレクションが最適です。日本製の礼服地よりも浅い色味にはなりますが、暗いところでは黒よりも暗く見えるミッドナイトネイビーや、バラシア、マイクロヘリンボーンといった格式高いフォーマル地が収録されています。
当店オープン時の2019年には新規バンチブックの流通が無く、同一内容の小さい持ち運びようのものを貰いました。
いかがでしたでしょうか。礼服には日本製生地、他フォーマルウェアにはイタリア、英国製生地がお勧めです。拘りのフォーマルウェアをお探しの方は是非一度お問い合わせいただけますと幸いです。
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