こだわりの洋服であるからこそ、着こなしも大切になってくる話。~パンツの股上問題~
太すぎず細すぎずサイズがピッタリ合う洋服を“ジャストサイズ”と呼びますが、このピッタリ合うというのが曲者です。人によってジャストサイズの概念は異なり、自分がジャストサイズと思っていても別の人からすると細すぎる、反対に太すぎると思われる事があるからです。
当店、EGRETもこれがジャストサイズです!!と自信を持ってお勧めできるものはありますが、お客様によっては違う感じ方をされる場合もあります。フルオーダースーツを表すビスポークの語源が Be spoken (対話) からきているように、感じ方のギャップを埋めていけるようお客様と対話を重ねお仕立てしていく事がオーダースーツを成功させる為に不可欠です。
本日は、トラウザーズ (パンツ) のサイズを設定していくうえで大切な“股上問題”についてご紹介していきますので、読んでくださっている皆様の拘りのトラウザーズをお仕立てしていただけるご参考になれば幸いです。
トラウザーズの股上寸法の設定について
股上とは、股の位置からウエストベルト位置にかけての寸法の事です。縫い代部分を測った“股ぐり寸法”と混同されることもありますが、あくまで股位置から地面に垂直に測る必要があるので製品に上がった段階では測りにくい数字です。また、型紙設計では前股上、後股上と分けて考える必要があります。
この股上寸法をどうするかは、どういった洋服を作成していくかによって変わってきます。例えば、写真は私なのですが、股上位置をへそ位置の一般的には長めの設定にしています。
股上が短いものに比べて足を長く見せる効果があるとともに、ベストを合わせた際のベスト丈を短く設定出来るメリットがあるため自分のトラウザーズはこれくらいのサイズ感のものがほとんどです。
股上をなるべく長くしようという考え方に対して、落ち着きの良い場所に股上を設定するのもアプローチ方法の一つです。骨盤の出っ張った箇所は、丁度ウエストベルトが引っかかりやすく痩せている方から太っている方どんな方であってもずれ落ちる事の少ない場所です。
例えば、へそ位置の股上設定しているのにも関わらず、骨盤部分までずれてしまうと非常にもたつきの原因で不細工なシルエットになります。お腹が出ている方などはお腹にくびれで引っかからずこの現象に陥りやすいです (私もです) 。長めの股上を取るのであればウエスト位置を固定するブレイシーズ (サスペンダー) で吊るか、普段より意識してズレを直して頂く必要があります。
ウエストがずれ下がった右の画像よりも、左の方が足が長く見えるかと思います。当店ではよりスタイル良く見える長めの股上設定をお勧めしておりますが、腰にずれ落ちる懸念があられるようでしたら、最も落ち着きが良い骨盤位置で股上を設定するのもよろしいかと思います。
せっかく拘りを持って股上を長めにしても、着用する際にこういった点を意識しないと格好良く着こなして頂く事が難しくなります。
洋服をオーダーするうえでは採寸の技術もそうですが、“対話”が最も大切です。これからもお客様との対話を通して拘りの洋服をお仕立てしてまいりますので、姫路市でオーダーをご検討の方は是非一度お問い合わせください。
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