【プレステージオプション】クセ処理やイセ処理を行うとどうなるのか?
本日はスーツの小ネタ。
まずはこちらの動画をご覧ください。
前半部分では背中心のダーツ分量を肩甲骨に逃がしており、後半部分で肩線のイセ処理を行っています。
紳士服のジャケットは基本的に3面体といい、前・脇・後身頃が左右にある形で構成され、洋服の構造上、接いでいる (縫製している) 箇所やダーツの位置で立体になります。つまりそれ以外の人体で出っ張ている箇所 (肩甲骨や前肩、お尻、ふくらはぎ等) に接ぎが無ければ布が身体に当たっている (負荷を与えている) 事となります。
これを改善させるために、アイロンでクセ処理を行い、接いでいる箇所の丸みを他の部分に持ってくる事でより身体に合った洋服を作ることが可能となります。
パンツをイメージしていただくとより分かりやすいです。パンツは前後に分かれたパーツを左右の縫い代で接ぎます。
ワタリ寸法を維持したまま、お尻の付け根部分を細くしようとした場合、図の赤線のようにえぐりたくなるものですが、これでは前から見ると細くなりますが付け根部分は接ぎ個所ではないため効果はありません。黒と赤の差寸分のダーツ分量をお尻に持ってくる事ですっきりと見せる事ができるようになります。
クセ処理を行ったものはチェック柄の洋服だとすぐに分かります。クセ処理を行う事によりこれだけ歪曲し、洋服自体の丸さが際立ちます。このクセ処理は、当店のフルハンドメイドレーベルでは標準仕様、MTMのクラシコレーベルでもプレステージオプションとして付け加えて頂けます。
カスタムレーベル、クラシコレーベルでお使いしている工房はどちらも技術のあるしっかりとしたところです。このクセ処理のイメージと致しましては、仕立ての良い洋服がさらにパワーアップするとお考えいただければと思います。
中々分かりにくい部分でございますので、ご不明な点等ございましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
スーツの小ネタの関連記事
- スーツの小ネタ
【クラシコレーベル】縫製工房の展示会にお邪魔してきました。
4月10日に店舗を休業し姫路のオーダースーツ店EGRETのスーツを縫ってもらっている工房にお邪魔してきました。今回は真ん中のクラシコレーベルのもので、MTM (パターンオーダー) 国内最高峰と言える技術を見せていただいたり、学びがある部分があったり、充実した日となりました。 トッ...
- スーツの小ネタ
【工場見学】古き良きションヘル織機を使われている “葛利毛織” にお邪魔してきました。
“礼服”は以前のブログでもご紹介しましたが、日本にしかないフォーマルウェアのジャンルであります。日本にしかないのであれば国産の生地を選ぶのが適切です。英国、イタリアでもフォーマル用の服地は展開されていますが、黒の深さは特に意識をされておらず、国産の黒と比べるといささか色が浅くなり...
- スーツの小ネタ
【動画】スラックスのアイロン掛けする様子をUPしました。“格好良く着るために大切です”
良い洋服を纏っていても、毛玉が出来ていたりしわくちゃで型崩れしていたり、最低限のお手入れをしていないと格好良く見えないものです。 お手入れの中でお客様から最もよく頂くご質問がタイトルにある“スラックスのアイロン掛け”です。 スーツの基本のキの素材であるウールは着用すればシワも...
- スーツの小ネタ
【フォーマルウェアを作る回】SMITH WOOLLENS “DRESS & FORMAL WEAR”
よくスーツ業界で言われる話ですが、日本の礼服として扱われる黒い略礼服は世界的に見ると特殊です。本来フォーマルウェアは昼と夜という時間や場所によって着ていくものが分かれているもので、冠婚葬祭、時間、天候に関係なくこれさえ着ていれば大丈夫という特殊性が礼服にあります。 そもそも礼服は...
- スーツの小ネタ
『どれにしよう?』ステッチで変わるジャケットの雰囲気について。
オーダースーツをお作りになられる上で、どういう生地にするかがスーツの印象を決める一番の要素です。黒に近く深いミッドナイトネイビーの無地を選べばとてもフォーマルな洋服になりますし、主張の強さを出すためにストライプを選んだり、洒落たイメージのチェック柄だったり生地選びが最も大切です。...
- スーツの小ネタ
【格好良く装うため】スラックスのクリース線が消えてもクリーニングに出さずメンテナンスをする。
当ブログをご覧頂いている方に共通するのは、スーツやジャケットといった洋服を格好良く着たいと思われている事ではないでしょうか。そのためには自分に合った洋服を選んでコーディネートするという事も大切ではありますが、メンテナンス部分を忘れてはいけません。 どんな格好良い洋服も型崩れしてい...