【生地の基礎知識】平織りと綾織りについて一考。どういう服を作りたいかで決めると楽しい。
オーダー品の魅力は、数多ある選択肢の中から着用されるシーンに合ったものをお作りいただけることにあります。
フルオーダーと同義であるビスポークが、対話を意味するBe spokenからきているのも、お客様との対話を通してでしかオーダー品が作り上げられないことに由来します。このシーンであればこういうデザインで、こういうフィッティングに、こういう生地というようにお客様にとってより良い洋服が作り上げられていきます。
本日はデザインやフィッティングといった話は一旦置いておき、、、最も分かりやすいであろう“生地”の基礎知識、平織りと綾織りについてご紹介していきます。オーダーされるお客様にとって一番楽しい時間の一つでもある生地選びのご参考にしていただけますと幸いです。
同じ色柄の生地でもそれぞれ印象が変わる
紺無地のスーツ生地というと数十種類の当店はご提案ができますが、目付と織り方で印象が変わってきます。
目付とは生地の重さのことで、生地の場合は厚さとほぼ同義です。
織り方は大きく二つに分かれており、平織りか綾織りかのどちらか。布帛生地は経糸と横糸で構成され、経糸を張った状態で横糸を通していき織られていきますが、この横糸をどういう順で経糸に通していくかで平織り、綾織りかが決まっていきます。
平織りは、経糸と横糸を1本ずつ交互に通していく一番シンプルな織り方です。仕上がった生地は左右対称で薄っすらと縦横直角に線が見えています (一番上の画像の左側が平織り) 。
綾織りは、経糸が複数の横糸を抜かして織られており、仕上がった生地は斜め方向に線が見えます (右側が綾織り) 。
平織りの特徴として摩擦に強く丈夫。質感は綾織りに比べてザラっとしてコシが強くなりやすいため薄い生地でも服にしやすく、またスポーティな印象を出すことができます。対して、綾織りは糸を抜かしたことにより光の反射が強くなり、光沢がでやすく滑らかな質感となり、エレガントな印象になりやすいです。また平織りに比べて厚手の生地が作りやすいのも綾織りの特徴です。
平織り
同じブランドのクオリティが似ている生地だと分かりやすいです。
こちらはイタリア生地のカノニコで、目付240g、super120'sの原毛を使ったウール100%の平織り。縦横に線が見え、ザラっとした質感が伝わりますでしょうか?
綾織り
同ブランドの目付260g、super110'sの原毛のウール100%綾織りの生地。右上から左下に斜め方向に線が見え、滑らかな艶がでています。
英国生地の比較
英国を代表するハリソンズの、FRONTIER (フロンティア) 平織り目付300gと、REGENCY (リージェンシー) 綾織り目付280~300gというほぼ同クオリティのシリーズ。
リージェンシーをラグジュアリーファインスーティング、フロンティアをオールウールスーティングと表現するように、ハリソンズが両300gの3シーズンスーツ生地をどう扱ってほしいのか分かります。
上が平織りのフロンティア、下が綾織りのリージェンシーです。エレガントなスーツに適した生地は、間違いなく綾織りのリージェンシーではないでしょうか。対してフロンティアも平織りでは珍しい300gとしっかりしているユニークなクオリティのため、イタリアのスーツでも南側ナポリの雰囲気など軽やかにスポーティにしたい場合、その特性をうまく発揮してくれることと思います。
平織りの仕上がり品
実際に平織りの生地で仕上がったスーツをご紹介します。
綾織りの仕上がり品
だいたい同じくらいの目付のクオリティの平織りと綾織りの仕上がり品をご紹介していますので、写真からは違いが分かりにくいかもしれませんが、雰囲気の違いを感じていただければと思います。
まとめると、薄い生地であっても強度を出しやすい平織りはどちらかというと春夏に適した生地で、スポーティさやカジュアルさを出したアイテムを作る際にお勧めです。綾織りの生地はしなやかさと光沢を出しやすいためエレガントな洋服を作るのに適した織り方です。
目付や混紡素材により雰囲気は大きく変わりますが、平織りと綾織りという観点から洋服づくりを捉えても面白いのではないでしょうか。
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