ノーネクタイのシャツは【3つの襟】〜レギュラーカラーだとチグハグに~
夏に近づくにつれ、スーツを着られていてもノーネクタイにされる方が増えてきます。会社によってはクールビズ期間が設定され、“ネクタイをしてはいけない”ところもあるくらいです。
ブラウンやベージュといったリラックス感のあるスーツを除いて、ネイビーやチャコールグレーといった一般的なビジネススーツであればネクタイをされた方が格好良いのは間違いないですが、会社で決まっていたり、30度を超える日本の炎天下のなかを長時間歩く際など、ネクタイを絞めるのが難しい時もあるのが現実です。
スーツに合わせるシャツをドレスシャツというように、いつも合わせているシャツは往々にしてネクタイを合わせることが前提に設計されていることがほとんどです。
当店のブログをご覧になられている方は、格好良くスーツを着用されたいという方だと思いますので、ノーネクタイ時に少しでも格好良く見える3つの襟の形をご紹介していきたいと思います。少しでも夏のスーツライフのご参考に是非最後までご覧ください。
ノーネクタイのシャツは3つの襟について
前提として、ネクタイを合わせる際に基本となるシャツの襟の形はワイドスプレッドカラーとレギュラーカラーです。ワイドスプレッドカラーは、羽根部分の角度が約90度になっている襟の形のことで、長さは9cm程度がクラシカルです。レギュラーカラーはさらにその角度が狭まっていいます。
これらはネクタイを前提としている形のため、ノーネクタイにすると襟が暴れてスーツのラペルに乗ってしまったり、収まりが悪くなります。ノーネクタイを格好良くする為には収まりを良くする必要があります。
今回、ご紹介する3つの襟は、カッタウェイ・ボタンダウン・イタリアンカラーです。
まず一つ目がカッタウェイ。
カッタウェイとは襟の開き角度が180度に近いもので、最もカジュアルな襟の一つです。大きく開いているため、ネクタイを絞めるのは不適当ですが、台衿のボタンを外すと収まりが良くなりスポーティな印象を持たせます。数年前イタリア発信で大流行した衿の形で、第一ボタンを外して胸元を大きく開くスタイルがよく見られました。
ちなみに、豆知識を一つ。
第一ボタンとは、本来台衿下の身頃についている一番上のボタンのことで、台衿についているボタンは台衿ボタンといいます。アパレル関係者でも第二ボタンまで開けて~という表現は本来第一ボタンのことだったりします。本来の意味で第二ボタンまで開けるとタリアトーレのピーノさんのような色気のあるスタイルになるため、日本人では着こなすのが難しそうです。
(※出展:leon.jp)
2つ目のボタンダウンと、3つ目のイタリアンカラーです。
ポロ競技から生まれ、襟が暴れないようにボタンが取り付けられた、ボタンダウンもノーネクタイに適した襟の形です。アメリカのブルックスブラザーズ等はボタンダウンでもネクタイを合わせるスタイルを提唱していますが、バランスを掴むのが個人的に難しく感じる為、私はネクタイを絞めて着用することはほとんどありません。
イタリアンカラーは衿の形というよりは、身頃の見返し部分と襟が一体となった仕様のことを指します。
見返しから台衿、羽根衿と続きになっているため、ボタンを開けた際に収まりが良くなり、台衿ボタンと第一ボタンの間のロールも非常に綺麗です。
ネクタイは締めれなくもありませんが、基本的にはこれもノーネクタイ用の襟の形とお考え下さい。
カッタウェイ・ボタンダウン・イタリアンカラーをご紹介いたしましたがいかがでしたでしょうか。襟の形をスポーティにすることでノーネクタイ時に格好良くするスーツをご着用いただけるようになります。
夏のご着用が多いかと思いますので、素材も冷感作用のある機能性コットンや、夏素材であるリネン等をお選びいただくとさらに素敵に着こなしていただけるかと存じます。ご参考にしていただけますと幸いです。
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