【パンツの小ネタ】足を長く見せるパンツに必要なのは、実は●●部分を絞ること!
オーダーを承る際に、度々頂くリクエストで“裾をかなり狭くしてほしい”というものがあります。
アパレル用語で裾の狭いパンツをテーパードシルエットといいます。
このリクエストは20・30代前半のお客様に多いのですが、足を長く見せようと考えて裾を絞ることは効果が小さいことはあまり知られていません。もちろんテーパードシルエットがお好みで選択するのは別段問題ではありません。
足首部分で靴との調和が切れてしまう過度なテーパードシルエットでは、足は細く見えますが長く見えるものではありません。靴と流れるように繋がっていくシルエットこそ脚長効果のあるパンツといえます。
今まで脚長効果を狙ってテーパードを選択されていた方であったり、足を長く見せるためのパンツを知りたい方は、是非最後までご覧になっていただけますと幸いです。
脚長効果のあるパンツとは
そもそも、テーパードに脚長効果があると思わせている方が多いのは、トレンドを意識したファッション雑誌の、ワイドあろうが、スキニーシルエットの細いパンツであろうが、どんなシルエットでも“脚長効果がある!”と書いてきたことが弊害だと思っています。
●●こそ足が長くみえるシルエットです、と言い切ってしまうと、それしか売れなくなってしまうため、ダブルスタンダードといい流行の商品に合わせて都合よく改変されてきているのが現状であり、個人的に残念なことです。
靴と流れるように繋がっていくシルエットこそ脚長効果のあるパンツといいましたが、その為に重要なポイントは、“膝巾 (ひざはば)”にあります。
椅子に座ったり立ったりしても、ふくらはぎ部分が引っかからない程度に、膝巾を絞っていくことにより足がより長く見えます。
目安にしていただきたい数字としては、膝のお皿がある部分をグルリと一周した数字に6cm程度を足して2で割った数字がギリギリの膝巾です。
(例:膝実寸40cm+6cm÷2= “膝巾23cm”)
あくまでこれは目安の数値で、ロングホーズを履く場合は足す数字が8cm必要になることもあります。
そして、裾巾は膝巾から4cm程度マイナスしたものが目安となり、膝から裾にかけて綺麗な線の繋がりになりやすいです。
裾巾は膝巾が基準となっており、ふくらはぎの影響も受けるため、最初から裾巾●●cmにしたいといって必ずしも出来るものではありません。イラストBのように、ふくらはぎで引っ掛かりができてしまう事もあります。
イラストCは適度に膝を絞り、裾にかけても無理のない範囲で絞りを入れていますので引っ掛かりもなく、靴と一体となるような脚長パンツの完成です。
今回のテーマとは外れますが、さらに美しくするのであればイラストDのように、クセ処理を行いパンツを歪曲させると足にストレスをかけない美しいシルエットを作り上げることも可能です。他にも綺麗なシルエットを作る要素は多数ありますが、まずは意識していただきたいポイント、膝巾についてご紹介いたしました。
パンツは前パンツ、後ろパンツのみというシンプルな構造であるが故に誤魔化しの効かないアイテムです。履く人に合わせた美しく仕上げたパンツをお探しの方は是非一度お問い合わせください。
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