【マニカカミーチャ】スーツのシャツ袖は本当に動きやすい? 『いいえ、違いますよ』という話
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スーツスタイルは英国式、イタリア式、アメリカ式と3つに分けられる事が多いですが、その中でもイタリアは北のミラノ、中央に位置するフィレンツェ、南のナポリと微妙にスタイルが変わってきます。
地域が変われば、スタイルが変わるという事をあらわしています。
イタリア・ナポリは最も温暖な南に位置することから、軽やかなスタイルが特徴であり、本日のテーマである“マニカカミーチャ”が代表的な袖付け方法として取り入れられています。
マニカカミーチャとは何なのか?
マニカカミーチャはシャツ袖とも呼ばれ、通常スーツで用いられるセットインスリーブという袖付け方法と分けれています。
この違いは主に“縫い代の倒し方向”によります。
袖付けは、身頃と袖の二つのパーツを用いて行われ、身頃のアームホールと袖ぐりを縫い合わせます。その時にできる縫い代を袖方向に倒すのか (セットインスリーブ) 、身頃方向に倒すのか (マニカカミーチャ) の違いです。
シャツの袖ぐり部分を見ていただくと特に分かりやすいのですが、縫い代が身頃方向に倒されていて、袖よりも盛り上がっています。
スーツにおけるマニカカミーチャも同様で、以下の写真のようにセットインスリーブであれば袖の方が“明らか”に盛り上がりを見せていますが、マニカカミーチャのほうは袖の盛り上がりが抑えられているように見えます。
セットインスリーブ
マニカカミーチャ
シャツに比べて分かりにくく、盛り上がっているように見えるのは、スーツはシャツよりも“イセ込み分量が多い”事によります。
イセ込みとは、距離の違うパーツを縫い合わせる事であり、長い距離の方 (この場合は袖ぐり) は、丸み帯びていきます。
イセ込みを何故入れるのか?については別記事でご紹介します。
よく言われる、イセ込みが動かしやすくするため“だけ”の意味合いであれば、シャツにだってイセ込み分量を多くするはずですがそうしません。
それは何故なのか?
...乞うご期待!
マニカカミーチャでもギャザーを寄せたスタイルもあります。イセ込み分量が多いという事よりも、アイロンでイセ込みを潰す (ギャザーを寄らないようにする) 処理をしていない事によってギャザーは生まれます。
なので、ギャザーが入っていないマニカカミーチャも正式です。
“肩回りに副資材を入れない事もマニカカミーチャの定義である”という説もありまして、これは洋服史あるあるの所説有りという物です (笑) 。どちらも正解ですので、一番の定義づけとしては縫い代の倒し方向だと思っていただいて間違いありません。
マニカカミーチャは動かしやすいのか?
マニカカミーチャの魅力としては、
柔らかく軽やかな見た目になる
という事です。
動かしやすさ云々はマニカカミーチャであろうが、セットインスリーブであろうが変わりません。
動かしやすさは肩線の角度、前肩処理、袖山の高さ、イセ込み分量、その他型紙構築と副資材云々によって決まっていきます。もしマニカカミーチャが動きやすいのであれば、もっとスーツに取り入れられているはずです。
マニカカミーチャは視覚効果、見た目のイメージが主な目的であり、固いイメージのスーツではなく軽やかに仕立てたい時に使用される袖付け方法です。
カッチリしたイメージの装いではなく、スポーティでカジュアルなスタイルのデザインにしたい場合、是非このマニカカミーチャをお選びください。動画でもマニカカミーチャを解説しております↓↓
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