【クールビズの正体】クールビズの是非と、省エネルックとの違いをスーツ屋が考察
クールビズは本来、地球温暖化対策の為に、室内や公共交通機関のエアコン温度を下げる為に打ち出されました。
服装自由化に伴い、政府としてクールビズを指示するのではなく会社や個人が委ねようというのが、2020年を最後に政府としてのクールビズ推奨を廃止した理由かと考えられます。
とはいえ、今年の夏も多くの企業でクールビズは取り入れられ、7・8月にもなると半袖シャツにスラックスだけというビジネスマンが増えていきます。
スーツ屋の私としては半袖シャツをビジネスで着用することはありませんが、炎天下の街中を長時間移動する場合、ネクタイを絞めてジャケットを着て歩くなど難しいですよね。特に日本の夏は湿度が高く、海外よりも体感温度は高いです。
クールビズは駄目だという洋服関係者もいますが、着用シーンを意識してクールビズを取り入れるのであれば、全然日本の気候にクールビズは合っていると思います。
日本の気候に合っているからこそ、
“格好良く着て欲しい”
というのが私の想いです。
クールビズの前身、省エネルックは浸透せず
過去、省エネルックという装いが大平元首相直々に提案されたことがありました。それが下の写真右。
引用 : https://article-image-ix.nikkei.com/
これは3パッチポケットとカジュアルなディティールを取り入れていてデザイン的には悪くはないのですが、現在半袖シャツを着る人はいても、半袖スーツを現在着用している人はいません。
世間に浸透しなかったのは、単純に格好良くない事、新たに半袖スーツを買う必要がある事、が理由に挙げられます。大平元首相を貶めるつもりはありませんが、似合うか分からない、人によってはダサいを言う斬新な半袖スーツをわざわざ買おうという人は極少数でした。
それに比べて、クールビズはネクタイを外そう、ジャケット脱ごうというすぐに始められる気軽さが浸透した理由だと思います。
但し、気軽だからと
“何故ビジネスでこの服を着るのか?”
を忘れてはいけません。
本来、ビジネスにおけるスーツの役割は見た目を整えて、ビジネスを円滑に進めましょうという意図が強いように思います。
クールビズスタイルにおいても少しでもより良い見た目で、格好良く着用していただければと思います。洋服はウンチクの部分もありますが、格好良くないといけません。
そんなクールビズスタイルを、より良く見せるためのポイントを3つにまとめて動画でご紹介しています (噛み噛み部分は全カットしていますw) 。
是非、こちらの動画もご参照いただき、この夏を格好良いクールビズスタイルで過ごす一助にしていただけましたら幸いです。
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