スーツの小ネタ - 【スーツの袖口】本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて

交通アクセス交通アクセス

11:00~21:00 (予約制)
079-240-6401

空き状況を見る

お問い合わせ

鳥形の紳士服ブログ

【スーツの袖口】本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて

【スーツの袖口】本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて
スーツの小ネタ

オーダースーツのデザインで恐らく最も語られる事が多いのが今回のテーマ、“本切羽”、“本開き”について。

“本切羽 (本開き) =高級である”

そう語られる事が多いデザインですが、それは間違いの部分もあり本質的で無いことが多いです。

『え?どういう事なの?』、そう思われた方は是非最後までご覧ください。

 
 

本切羽の特徴と開き見せとの違い

スーツの袖は“本切羽 (ほんせっぱ) ”、“開き見せ (あきみせ) ”、“筒袖 (つつそで) ”の3種類に分かれています 。

これらに共通しているのは、全て袖口のデザインだという事です。それぞれにボタンが付いている事がほとんどで、袖口の仕様をどうしていくかで上記3つの呼び方に変わってきます。

 
 

本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて

こちらの写真が本切羽です。

本切羽に近い言葉で本開きというものがあります。

本切羽と本開きはよく混同されがちで、本切羽とは袖の開閉ができる仕様の事であり、本開きとは実際にボタンホールを使って開閉できる仕様の事です。

本切羽は袖が開閉出来たら良いだけなので、釦ではなくスナップボタンで開閉できるものも本切羽と呼べます (ほとんど存在しませんが) 。

今回のブログでは、本切羽を含んだ用語として以後本開きと記載していきます。

 
 

本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて

何故、ボタンが袖口に付いているのか?

としてよく語られるのは、ナポレオンがロシア遠征時において、兵士が寒さで袖を使って鼻を拭わないようにボタンを付けたという説。これについて、実はナポレオン登場以前でも洋服の袖口には開閉できる釦が付いており、一つの昔話的な話として存在している説です。

ドクターズカフスという呼ばれ方をして、お医者さんが手術で袖をまくる為に付けている等、機能性を持たせるために存在する仕様です。

現在ではスーツの袖をまくる仕草はほとんどないと思いますが、本開きの一番外側のボタンを一つ外して、こなれた雰囲気を出す着こなしテクニックが存在します。

 
 

本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて

本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて

こちらが開き見せ。

本開きと違い、ボタンホールはあれど穴を開けず、中の仕様もボタンが開閉できないようにしています。

写真の開き見せの仕様ではボタンホール風に見せて糸をかがっているだけですが、実際のボタンホールと同じ形状にする事もできます。

ボタンの開閉はできませんが、袖口の端部分は布が重なるように縫製されていて一見すると本開きのように見えます。
 
 

最後に筒袖。

最も簡易的な袖口の仕様で、しっかりと端まで袖が縫われていて文字通り筒状になっています。

切羽とボタンが付いているだけなので、開き見せが、“開くように見せよう”とする意図があるのに対して、こちらはそんな気がさらさらありません。ボタンが付いていないものも筒袖と言います。

 
 

本開き (本切羽) ・開き見せ・筒袖はどれが高級?

一般的には本開きが最も高級な仕様で、開き見せや筒袖は簡易的な仕様である、というのが一般的なオーダースーツ店の認識だと思います。

しかし、これは分かりやすさを求めており“木を見て森を見ず”な部分でもあります。

 

本開きが何故高級なオーダースーツと語られる事が多いのか?

それは外から見ても分かりやすい“アイコン的な”デザインだからです。

 
 

本開きを作るのに手間と数センチ角余分に生地の用尺がかかる事に間違いはありませんが、“手間がかかる & 生地を少し余分に使う=高級である”というのは一概に言えません。

手間をかける事で、丈夫になったり、着やすくなる、美しくなるというのであればそれは間違いなく高級なのでしょう。しかし、手縫いでボタンホールを美し上げるのでなく、ミシンで仕上げたボタンホールの本開きが高級とは決して言えません。

 
 

当店でも本開きは2,200円 (税込) のオプションにしているので開き見せにするよりは“高価”になる事に間違いはありませんが、高級と言えるかは人それぞれの好み・価値判断によるのではと思います。

 

ボタンホールの綺麗さ云々を置いておけば、どんなスーツ工場・職人でも本開きを作る事ができます。

言い切るのであれば、マシンメイドの本開きができない所なんて存在しません。

どこでも出来るのです。

どこでも出来る事をする事が高級であると言えるのでしょうか?

 

であれば、『本開き (本切羽) のスーツは高級だ』なんていうよりも、マシンメイドのパターンオーダーでクセ処理をしていないのであればその工程を一つでも多くとったり、マシンでの袖付けではなくハンドで付けて着心地を上昇させたことの方が“高級”に近づくのではと私は考えています。

加えて本開きよりも開き見せや筒袖の方が、耐久性が高かったりお直しがしやすいメリットがあります。

マシンでの本開きが高級というのは誤りで、本開きの見た目が好きであればした方が良いですし、そうでないならどちらでも良い仕様であるというのが私の結論です。

 
 

本切羽 (ほんせっぱ) は実は高級でない?開き見せとの違いについて

そんな事を言いながら、、、私はボタンホールでかがってある見た目の方が好きなので本開きにしている事がほとんどです (笑) 。

本開きの特徴と高級と言われる事に対する違和感をブログでまとめました。

ご意見、ご感想等ございましたらお気軽にお問い合わせいただけると幸いです。

 

紳士服ブログ TOP


スーツの小ネタの関連記事

スーツの小ネタ TOP