ナポリの雰囲気があるドレスシャツ作りました
スーツにおける2大巨頭はイギリスとイタリア。それぞれ確立されたスタイルを持っており、趣きが大きく異なっています。
スーツ発祥の国イギリスのスーツの特徴は肩パッドがしっかりと入って構築的。年間の平均気温約10度という寒冷地にあって、鎧のようにガッチリしているものが多く、生地も厚いものが好まれています。子供や孫にも受け継ごうという意識が丈夫な生地を選ばせているのだと思います。長く使おう!という意思が伝わってきますね。
対するイタリアは温暖な気候と国民性も相まって生地が薄く、それを活かして軽やかに仕立てられています。縫製面でもゆるーく縫われ、身体に馴染む余白を付けるのもイタリアの傾向といえます。生地は色鮮やかで特徴的なのが多いので見ていて楽しいのはイタリア生地かもしれません。
さらにイタリアには北と南でスタイルが変わるというのもポイント
北のミラノと南のナポリは、日本でいう東京と青森程度の距離があり気温差は約10度くらい、ナポリは冬でも平均気温が10度を下回ることは少ないそうです。
気候が違えば、生活様式も異なり服装のスタイルも変わってきます。ミラノのほうが寒いイギリスに近い傾向がありガッチリしたスタイル。温暖なナポリはさらにイタリアの軽さが際立ち、柔らかなスタイルが多く見られます。
本日はナポリの雰囲気があるドレスシャツを作ったのでご紹介します。
ナポリの雰囲気って?
ナポリは現代でも職人が少人数で縫っている工場が残っていて、伝統が受け継がれています。その手仕事によるアイテムは曲線的で、動きの余白を残したものが多いです。スーツの中に入れる芯地やパッドも薄い、もしくは一部取り払ったものまで見られます。
当店のオーダーアイテムは全て日本国内で作っているので、ナポリの雰囲気を加えながらもしっかりと縫い上げた商品をご提案できます。
注目していただきたいポイントは、肩、背中、袖口に施されたギャザー。これはもともとあった”イセ込み”という技法を応用したものです。
服を丸く作るためには、イセ込みを入れる必要があります。例えば45cmというアームホールのボディに同じ45cmの袖を付けてしまうとひどくペタッとしたスーツになってしまいます。なので1.5cmや2cmといったイセ分を袖に入れて47cmにしてから、45cmのボディに縫いつけるわけです。
袖山(上の部分)中心にイセ込みを入れていきますが、スーツの縫製の中で最も難しい工程の一つなので基本的には熟練の職人が担当します。
少し話がそれました。通常はギャザーになってしまってはダメですが、ナポリではイセ分量を多くしてギャザーを取るスタイルが有名。通常よりもイセ分量が多いので、より丸く作ることができ動かしやすくなるというロジックです。
陽気で活発的なナポリ人にとって、動かしやすいこと、特徴的であることは重要なファクターなのだと思います。
意匠的な意味合いもあり、人とは違うシャツスタイルをとお考えの方や洋服好きにお勧めしたいデザインですので、気になられた方は是非お問い合わせください。
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