信頼を集める靴、ストレートチップの歴史と位置づけについて
”足元をみる”という言葉があるように、スーツにおいても靴の印象はそのままご自身の印象につながっていきます。どういった靴を履くかは、どういった場所に行くのかと同義で、靴によってフォーマル度の序列があります。
ウイングチップ、プレーントゥなど様々なデザインのなかで、最もフォーマル度の高いものが内羽根式のストレートチップ(ホールカットという1枚の革で作られた靴という説も…)です。内羽根式というのは、紐部分の仕様の話で19世紀英国王室で誕生したといわれています。フォーマルの反対、スポーティな印象になるのが外羽根式。羽根部分が外付けになっていて大きく履き口が開くので機能的なデザインです。
余談ですが、内羽根式をオックスフォードと呼ぶことが多いです(外羽根式はダービー)。私が大好きな映画、キングスマンでも”ブローグではなくオックスフォード”という合言葉があることからも想像できるように、正式な場の靴はオックスフォードということです。
ストレートチップというデザインは、トゥに真一文字のラインが入った形です。諸説ありますが、このデザインが生まれたきっかけには、靴を形どるための芯地の場所を明確にさせる狙いと、芯地の部分だけボコッと浮き上がって見えないようにする目的があると言われています。靴作り初期の技術ではプレーントゥ(何も甲にデザインがないもの)だと、芯地の位置が丸わかりで美しくなかったのかもしれないですね。
そういった背景を知り、固いデザインであるストレートチップを履くと背筋が伸びます。今日は特別な会議でプレゼンをする勝負の日だ、今日は夜に会食がありフォーマル度を高めたい、そういった日にはストレートチップはマストな形です。
ローファーで楽さばかり追い求めるのでなく、ご自身を奮い立たせるために身に着ける、そういった服装の使い方も素敵で良いのではないでしょうか。
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