【夏でも品格を保つオーダースーツ】FOX BROTHERSのFOX AIRで仕立てる快適な一着。

「真夏でも、背筋が伸びる一着を。」
そんな思いから、昨年の春に仕立てたのが、英国 FOX BROTHERS(フォックス・ブラザーズ)の“FOX AIR(フォックス・エアー)”のスーツです。
目付は約300gと、春夏にしてはややしっかりとした生地感。それでも、平織りによる優れた通気性と、シャリっとしたドライタッチの肌触りによって、軽やかで清涼感のある雰囲気をまとえます。むしろこの“しっかり感”と、強撚糸(強く撚りをかけた糸)によるハリ感のおかげで、湿度の高い日本の夏でも、きちんとした佇まいを保てるのです。
この生地は1930年代のアーカイブをもとに復刻されたシリーズで、現在でも海外の政治家や企業経営者たちに、夏の勝負服として選ばれています。日にかざせばわかるほどの薄さでありながら、想像よりも涼しく、そしてタフ。派手さはないものの、装いに確かな説得力を与えてくれる、そんな生地です。
仕立てへのこだわりも“軽やかに、品良く”
FOX AIRの生地に合わせて、仕立てにもいくつかの工夫を加えました。
まず目を引くのは、本襟掛けによって描かれるゴージラインの自然なカーブ。本来は直線的になりがちなこのラインを、襟付けを手仕事で行うことで美しい曲線に仕上げ、顔まわりに柔らかさと華やかさを添えています。加えて、マニカカミーチャ (雨振り袖) 仕様の肩がナチュラルな立体感を生み、無機質になりがちな夏の装いにニュアンスを加えています。
さらに、ジャケットの縁にはイタリア・ナポリの香りを感じさせるダブルステッチを採用。光の角度でさりげなく浮かび上がり、クラシックさを保ちながらも、どこか軽やかな印象に。かしこまりすぎず、程よいリラックス感を演出する、この時季にぴったりの仕様です。
パンツはアウトプリーツの2タック仕様で、腰まわりにしっかりとゆとりを確保。私自身、自分用のスーツはほぼ2タックで仕立てています。FOX AIRのハリ感と相まって、美しいドレープが生まれ、リラックス感とクラシカルな雰囲気が自然に共存します。
ネイビー・グレーならビジネス。ベージュなら砕けたシーンにも
FOX AIRはベーシックなカラー展開が魅力のひとつです。
ビジネスシーンでの信頼感を重視するなら、ネイビーやチャコールグレーが間違いありません。「夏の会議でもきちんとして見える」ことを重視される方におすすめです。
一方、私物として仕立てたベージュは、クールビズ以降のややカジュアルなビジネスシーンや、社外イベントなどによろしいかと思います。シャツやネクタイの色合わせで遊び心を加えれば、カジュアルすぎず堅すぎず、大人の余裕を感じさせる装いになります。
似た生地としては、HARDY MINNISのFRESCOや、William HalsteadのHigh twistがあります。これらも目付300g程度で強撚糸を使用しており、質感や仕立て映えの違いでFOX AIRと比較されることの多いシリーズです。
夏のスーツに求める信頼感
暑さを理由にシャツ一枚で済ませるのもひとつですが、やはりスーツが持つ“信頼感”は、何ものにも代えがたい価値です。
FOX AIRは、気温が高い時季でも「きちんと見える」ことを諦めたくない方にこそおすすめしたい生地。とりわけご年齢を重ねたビジネスパーソンにとって、「外見も中身も信頼に足る人」として印象づけるには最適な選択肢です。
夏の一張羅に、FOX AIR。
初めての夏スーツをお考えの方。また今お持ちの一着に少し物足りなさを感じている方。FOX AIRで仕立てたスーツは、その答えになるかもしれません。どうぞお気軽にご相談ください。
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