【鳥形の私物】1965年製のアンティークウォッチ。スーツスタイルに欠かせない時計について。

スーツスタイルを語るうえで、時計は欠かせないアイテムのひとつです。
今や誰もがスマートフォンを持つ時代において、時計は単に時間を確認するための道具ではなく、装いを引き立てる“最後の仕上げ”としての意味合いを持つようになったと感じています。
スーツの生地や仕立てと同じように、腕元に添える一本には、その人の趣味嗜好や美意識が映し出されます。
今回ブログにするのは、私が愛用しているアンティークウォッチのひとつ、1965年製のSEIKO “Lord Marvel(ロードマーベル)”です。もともとは1958年に誕生したモデルで、当時のセイコーの最高級機種として開発されたもの。それまでの国産時計とは一線を画す精度の高さを誇り、まさに“国産機械式時計の頂点”と呼べる存在だったそうです。
文字盤は温かみのあるゴールドフェイス。ケース径は約35mmと、現代の時計と比べると控えめなサイズ感。この“控えめ”というところが、クラシックなスーツスタイルにしっくりくる理由でもあります。
私自身、手首が細めなので、大ぶりの時計はどうしてもバランスが難しい。時計だけが浮いて見えてしまったり、袖口に収まりきらなかったりと、スタイル全体の調和を崩してしまうこともあります。その点、35mmであれば袖口にすっと収まり、スーツのシルエットを邪魔しません。
確かな存在感を放つ3針のクラシカルなデザインもスーツとの相性が良く、この時計に惹かれた部分のひとつです。
価格は10万円ほどと、近年の時計価格の高騰を考えると、アンティークならではで、割安に感じます。もちろん、古い時計ゆえに壊れやすさというリスクもありますが、それをどう受け止めるかもまた、愛着の一部だと思っています。
私のスタイルでは、靴、鞄、そして時計のベルトの色を同系色で揃えるようにしています。黒のベルトを選んだ日は靴も鞄も黒、ブラウンのときはすべてブラウンで統一。小さなこだわりかもしれませんが、こうした“色の調和”が、装い全体のまとまりを自然と引き立ててくれます (今日は黒の日でした) 。
ちなみに、アンティークウォッチはこのSEIKOで2本目。最初に手にしたのは、OMEGAの古い一本でした。現代の時計にはない味わいや、時代を超えて残る物の美しさに魅了されて、少しずつ集めています。多少の精度のズレも含めて、“生き物”のように感じられるところが、アンティークの面白さでもあります。
洋服も、時計も、靴もひとつひとつに思い入れを持つことで、纏ったときの気持ちがまったく変わってきます。お客様にも、そういった“こだわりのある一着”をお届けしたい。スーツだけでなく、その背景にある美意識ごとご提案できるのが、EGRETの価値だと思っています。
この時計を腕元に、今日も一日、そんな気持ちでお客様をお迎えしています。
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