【H.LESSER & SONS】仕上がり例① クラシカルなダブルブレステッドのオーダースーツ

仕立て服の聖地として名高い英国サヴィル・ロウ。その中でも特に信頼を集めるメーカーがH.LESSER & SONS (Hレッサー&サンズ) です。日本のテーラーの間でも、スーツ生地として最高品質との評価を受けることが多く、硬さと堅牢さの中に原毛のしなやかさを併せ持つ独特のクオリティが、高い仕立てやすさを生んでいます。奇をてらわず、まさに英国らしさのど真ん中を行く生地として、多くの紳士に選ばれ続けています。
300年以上の歴史を持つ生地メーカーも存在するなか、H.LESSER & SONSの創業は20世紀初頭と、決して古い部類には入りません。それでも現在の地位を確立したのは、品質への徹底したこだわりがあったからこそでしょう。
そんなH.LESSER & SONSの代表作がLUMB'S GOLDEN BALE (ラムズゴールデンベール) です。
LUMB'S GOLDEN BALE
イタリア製の極細原毛を使用した生地のような光沢や滑らかさはありません。しかし、それこそがLUMB'S GOLDEN BALEの魅力。シンプルだからこそ、その価値は写真では伝わりにくいものの、最高品質の原毛を用い、丹念に織り上げられたこの生地は、まさに究極のベーシックです。
今回、私が選んだのはチャコールグレーのマットウーステッド。初めてのH.LESSER & SONSの生地ということで、仕上がりを特に楽しみにしていましたが、その名に違わぬ美しいスーツが完成しました。人間の身体が立体なように、それに合わせた洋服は立体的であるほど仕立てが良いといえます。
弾力のある生地が生み出す、流れるようなシルエット。これを活かすために、仕立てにもこだわりました。本襟掛けや星留めなど、随所に手縫いを取り入れることで、ハンドならではの温かみと繊細さを感じられる一着に仕上げています。
袖を通した瞬間に感じる高揚感は格別。身体を包み込むような丸みのあるシルエットは、まるでCGのように際立っています。仕立ての良い上着は、着心地が良く、何時間でもストレスなく着用できるものです。
ポケットに手を入れる、そんな何気ない動作さえも美しく見せるのが、この生地の持つ品格ではないでしょうか。
今回仕立てたダブルブレステッドのスーツは、チャコールグレーの無地。クラシックの王道を行くスタイルです。紳士の装いには、こんな考え方があります。
「街を歩いていて、すれ違いざまに振り返られるような装いではいけない。それは、街に馴染んでいない証拠だからだ。」
英国らしい生地が決して奇をてらわないのは、この哲学に基づいているのかもしれません。もっとも、私は日本人であり洋服好きなので、素敵な装いを見かけたら、つい振り返ってしまうのですが 、、、 笑。
EGRETでは、これからもクラシックな装いを大切にした仕立てを続けてまいります。兵庫県姫路市で、こだわりの一着をお考えの際は、ぜひ一度お問い合わせいただけますと幸いです。
鳥形の私物紹介の関連記事
鳥形の私物紹介
【幻の革?】Baker's RUSSIAN CALF (ベーカーズ ロシアンカーフ) のオーダーローファー
革靴をお求めになる際に、革の種類まで拘られるのは、よっぽどの靴好きです。希少革のなかには、既製品では見ることのないユニークなものもあり、靴の個性が一層引き立ちます。代表格では革のダイヤモンドと呼ばれるコードバン、高級レザーの代名詞クロコダイルなどですね。その中でも幻の革と呼べるの...
鳥形の私物紹介
【BEIGE JACKET】イタリア製グレージュカラー生地のオーダージャケット
ビジネスでお使いなられるスーツにおいて、基本となる色味はネイビーかグレー。それに対してオレンジやブラウンの色味はカントリー、カーキやグリーンの色味はミリタリーを由来しており、スポーティな洋服に使われる色味です。これらは同じ色味であっても彩度が強いもの、グレイッシュなもの、明度が高...
鳥形の私物紹介
【BLACK SUIT】SMITH WOOLLENS “DRESS & FORMAL”
本日はEGRETの2024年最終営業日。お渡しからご依頼まで多数のご来店をいただき誠にありがとうございました。年末年始は8日間店舗を休業し、2025年1月7日 (月) 11時より営業再開いたしますので、ご不便をおかけいたしますが、来年もよろしくお願いいたします。 さて、2024年...
鳥形の私物紹介
【BESPOKE】手縫いによるオーダースーツのご紹介。
8月にブログでアップしていた自分用の仮縫いスーツ。修正を加えて仕上がってまいりましたのでご紹介いたします。当時のブログはコチラから。 >>フルハンドメイドオーダーの魅力について。 まずはディティールから見てまいります。段返り三つ釦でクラシカルな仕様のジャケットに、ベストは...
鳥形の私物紹介
ニットで合わせるオーダースーツはスポーティな素材で。~フランネル・コットンetc...~
冬の寒い時期になると、共布のベストの代わりにインナーダウンをコーディネートされている方を見かけることがあります。確か、10年ほど前にイタリアのブランドHERNOが先駆けて展開したのが始まりだと記憶しています。 ただ、本来のクラシカルなコーディネートを考えると、一般的な梳毛のスー...
鳥形の私物紹介
【3年目】英国製ツイードのジャケットとホイップコードのトラウザーズの冬コーディネイト。
まだ12月にもなっていないというのに、思わずコートに手が伸びるほどの寒さが続いています。今年の1月や2月は、さらに厳しい寒さになるのでしょうか。そう考えると少し身震いしてしまいますね。昨年の冬はどんな服装でこの寒さを乗り越えていたのか、不思議に思う今日この頃です。 さて、本日も鳥...