【幻の革?】Baker's RUSSIAN CALF (ベーカーズ ロシアンカーフ) のオーダーローファー

革靴をお求めになる際に、革の種類まで拘られるのは、よっぽどの靴好きです。希少革のなかには、既製品では見ることのないユニークなものもあり、靴の個性が一層引き立ちます。代表格では革のダイヤモンドと呼ばれるコードバン、高級レザーの代名詞クロコダイルなどですね。その中でも幻の革と呼べるのは、本日ご紹介するRUSSIAN CALF (ロシアンカーフ) ではないでしょうか。
RUSSIAN CALFのオーダーローファー
18世紀のロシアで生まれ、西欧諸国へも輸出されていた高級革RUSSIAN CALF”。その特徴は、驚異的な強度と柔軟性、防水性、そして白樺オイルを染み込ませた独特の香りにありました。一時は紛失された革の製法が、1786年に沈没した帆船から発見されたことで再び注目を集めます。様々なタンナーがRUSSIAN CALFという名称の革を作っていますが、オリジナルレシピに最も忠実なのが英国の伝統あるタンナーJ&FJ BAKER (ベイカー社) 。ただしBAKERをもってしても独特の菱形のシボの再現には至らず、型押しで表現されている作成が困難なレザーです。
その幻の革を使い、今回私物の靴を作成しました。長い年月を経てよみがえったRUSSIAN CALFのローファーをご覧ください。
固くハリのある革は決して成形しやすい素材ではありませんが、美しいカーブを描くローファーが完成しました。一枚革を使用し、ヒールカップ部分のみのシームで仕上げたホールカットデザイン。迫力のある革だからこそ、その魅力を最大限に活かすシンプルなデザインが最適だと考えています。
土踏まず部分はしっかりとくびれ、ヒールから伸びるロングカウンター (芯) が足をしっかりとサポート。これにより、靴としての美しさと快適な履き心地を両立させています。
足元に存在感が生まれる一足に仕上がりました。この日は到着直後だったためスーツに合わせましたが、デザイン的にはジャケパンスタイルやブーツを履く感覚でコーディネートしていく予定です。
オーダー靴のラストについて
続いて、当店のオーダー靴の基本となるラスト(木型)についてご紹介します。比較対象は、イタリアの既成靴 STEFANO BEMER。長年愛用しているため少し使用感がありますが、ご容赦ください。
最大のポイントはヒールの丸みです。左がSTEFANO BEMER、右が当店のオーダー靴。STEFANO BEMERはシームレスヒールという接ぎ目のない美しいデザインですが、より立体的な丸みを表現するには、あえて接ぎを入れる方が有利です。当店の職人もシームレスヒールの採用を検討しましたが、理想の丸みを出せなかったため、現在のデザインに落ち着きました。
横から見たときの丸みの違いは一目瞭然です。人種によって合う靴の形は異なり、日本人には小ぶりで丸みのあるヒールカップが適しています。ヒールカップの形状によって踵のホールド感が大きく変わるため、フィット感の良さを追求する上で非常に重要な要素です。
同じく私物の JOHN LOBB も、丸さの少ないヒールカップなため、これは国ごとの靴作りの特徴もあるのかもしれません。
いかがでしたでしょうか。幻の革 Baker’s RUSSIAN CALF を使用したオーダーローファーをご紹介しました。スーツスタイルはもちろん、足元までこだわることで装いの楽しさが一層広がります。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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