毎年着たくなる大人の夏スーツ|ウールシアサッカーの魅力

年齢を重ねるほどに、洋服選びにはその人の“価値観”がにじみ出てきます。
目新しさよりも、信頼できるものを。流行ではなく、自分に馴染む一着を。そんな基準で選ばれた洋服には、時を経るほどに深みが宿ると感じています。
私にとって、夏になると自然と袖を通したくなるスーツがあります。2023年に仕立てた、ウール素材のシアサッカー生地を使った一着です。
「また今年も、これを着たい」
そう思える洋服があるというのは、案外贅沢なことかもしれません。
シアサッカーと聞くと、コットンを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし私が愛用しているのは、ウールで織られたシアサッカーです。
コットンよりもしなやかで、スーツの構築的な仕立てにもよく馴染み、身体に沿うような美しいシルエットが出やすいのが特長です。また、シワが目立ちにくく、復元力にも優れているため、出張や移動の多い方にも安心して着ていただけます。
加えて、ウールはコットンに比べて劣化が少なく、長く愛用できるのも魅力。実際、このスーツも2年が経ちましたが風合いを損なうことなく、むしろ身体に馴染んできたような着心地の良さがあります。素材の表情が柔らかく、年齢を重ねた方にも自然に馴染むのもウールサッカーならでは。軽快さを持ちながらも、子どもっぽく見えることはなく、大人の夏の装いとして安心して着ていただけます。
今回のコーディネートでは、カジュアルな印象のダンガリーシャツを合わせていますが、オックスフォードのボタンダウンシャツやポロシャツ、半袖ニットなどとも好相性です。
ウール素材とはいえ、シアサッカーは軽やかさがあり、夏の会食やクールビズといったシーンにもおすすめです。軽く羽織るだけで、シックな装いが完成します。
もちろん、通年で着られる3シーズンスーツも魅力的ですが、「夏になったから、あのスーツを着よう」と思える一着があるというのもまた、洋服好きにとっては格別な贅沢です。
大人の装いに必要なのは、派手さではなく“安心感”かもしれません。今年もこのスーツを着る季節がやってきました。その瞬間に「袖を通したくなる服」があるということ。それこそが、“長く着る”という価値の証ではないでしょうか。
そして今、来年以降の春夏に向けた一着を仕込んでいるところです。
U-NEXTで改めて観た『ゴッドファーザー』3部作に刺激を受け、とくに第2作でアル・パチーノ演じるマイケル・コルレオーネが、ボスとしてパーティで着用していたグレーのスーツに魅了されました。1970年代の作品とは思えないほど古びない装いに、感服するばかりです。
出典: i.pinimg.com
出典: i.pinimg.com
そこでアルパチーノ演じるマイケルコルレオーネが2でボスになってからパーティで着用していたグレーのスーツが大変格好良く、近いイメージの生地で自分用に作成中です。
そのスーツを再現するわけではありませんが、雰囲気を参考に、自分らしい解釈で一着を仕立てています。映画ではシルク素材だと言っていましたが、私はネップの入ったウールスーティングを選択。NIKKEの「DESIGN」バンチに収録されていた、ライトグレーのグレンチェックがちょうど理想に近く、即決しました。
仕上がりはまだ少し先ですが、こちらもいずれ「また今年も着たい」と思えるような、そんな一着になればと願っています。
姫路市でこだわりのスーツをお考えの際には、どうぞお気軽にご相談ください。
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