【スーツの先にある愉しみ】3名のお客様にお仕立てした日常の一着

EGRETには、スーツ以外の装いも、自分の体に合うものを仕立てたいとお越しくださる方が増えています。スーツほどかしこまらず、けれど既製品にはない自分に合った“雰囲気の良さ”をまといたい。
今回は、そんな想いからご依頼いただいた3名のお客様の仕立て例をご紹介いたします。
ウールシルクの軽やかなジャケット、思い出の布で仕立てた一着、そして秋の空気を感じる白シャツ。それぞれに、日常を少しだけ豊かにしてくれるものがあります。
イタリア製ウールシルクの軽やかなジャケット
最初にご紹介するのは、イタリア製のウールシルク素材を使用したジャケット。強撚糸によるシャリっとした質感と、シルク特有のしなやかさを併せ持ち、シワになりにくいのが特徴です。
シルクと聞くと光沢感をイメージされる方も多いですが、ブレンドすることで質感を良くしたりや強度を上げていく繊維でもあります。こちらもマットな風合いに仕上げることで、日常に馴染む表情をつくり出しています。
細かなハウンドトゥース柄は、青と紺という濃淡の異なる糸で織られ、無地のように見えて奥行きのある表情。「スーツを着ない日でも、きちんと見える服を」というご要望から、軽やかで通年着用できる仕様にしています。11月に予定されている海外でのご着用にも対応できるよう、さっと羽織れる一着にお仕立てしました。
おばあ様の生地から生まれたヴィンテージジャケット
二人目のお客様は、ご自宅で大切に保管されていた、おばあ様の国産生地をお持ち込みくださいました。長い年月を経た生地は乾燥して裂けが発生しやすいため、仕立てる前にはしっかりと蒸気を吸わせて本来のウールの質感を戻していく作業から始まります。
本来はスーツをご希望でしたが、用尺が限られていたため、ジャケットとしてお仕立てしました。当時の生地は短尺のものが多いため、体型によってはトラウザーズまで生地が収まらないということが多くあります。
生地は、打ち込みのしっかりとした茶みがかったグレーの細かなチェック。赤の糸がさりげなく配され、ヴィンテージらしい雰囲気を感じさせます。
デザインでは、ナポリモデルを採用。裾まで続くダーツとマニカカミーチャ (シャツ袖) の柔らかな肩まわりが、軽さと立体感を両立させています。
“過去から受け継いだ布を、今の時代に着る”、そこには既製服にはない深い魅力があります。
秋の装いに添える、素材違いのホワイトシャツ
最後は、素材違いで3枚のホワイトシャツをお仕立ていただいたお客様。以前は春夏用としてお作りしましたが、今回は秋冬仕様で承りました。
2種類の少し厚みのあるオックスフォード生地、そしてほんのりと起毛感を感じる柔らかな素材を組み合わせています。すべて色はホワイトながら、それぞれ異なる表情を持つ3枚です。
共通のデザインはボタンダウン。前回のモデルから衿腰をわずかに低くすることで、お客様のご要望を反映させています。
真なる理想へ向けて近づけていけるのも、オーダーならではです。
いかがでしたでしょうか。EGRETのお仕立ては、スーツだけにとどまりません。気負わず羽織れるジャケットも、日常を彩どるシャツも、すべてお客様の身体合う美しさを軸に設計しています。
その人らしさが滲む洋服が結果としてスタイルをつくっていき、今回ご紹介した3例も、そんな考えの延長線上にあります。
季節を問わず、自分らしい一枚を仕立てる愉しみを、ぜひ感じていただけましたら幸いです。
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