『ダーツはどこへ消えた?』(伊) フィレンツェモデルのオーダースーツはマニアックな件
オーダースーツEGRETは、フィレンツェモデルと題して新しいイタリアンスタイルのスーツを展開し始めました。
イタリアのスーツと一言でいっても、北からミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリと都市によってスタイルは様々。
工業化が進んだ英国サヴィルロウに比べ、“個”の色が強く反映されるイタリアでは同じ都市のテーラーショップでも趣向が変わってくるため、“フィレンツェのスーツは全てこれだ”という訳ではないのですが、、、
フィレンツェのエッセンスを存分に堪能できるよう新たに型紙を起こし、一癖のある仕上がりになりましたので、お洋服好きの方は是非最後までご覧いただけますと幸いです。
フィレンツェモデルの概要
今回フィレンツェモデルの一番のポイントはフロントダーツを廃して、
二面体になっている点です。
通常、スーツは前身頃、脇身頃 (細腹) 、後身頃の3つで構成された所謂三面体です。
三面体にする理由は、身体の形を作りやすくする為 (※より丸みのある女性服には四面体という作りもあります) 。
もし、一枚の紙を丸めて筒状にするとどんな形になるでしょうか?
一枚を丸めるので、くびれが何もない、寸胴な筒になりますよね。
この形状で良ければパーツを3つに分ける必要はなく、一枚の布で作ることができますが、スーツはバスト、ウエスト、ヒップと異なる寸法で、さらに部位によってふくらみやくびれの分量を変える必要があります。
切替え線とはそもそもダーツの事であり、複雑なシルエットを作り上げる為には、パーツの分割化かダーツを取らないといけません。
今回のフィレンツェモデルの話に戻ると、通常3枚 (前身頃、脇身頃、後身頃) のパーツに加えてフロントダーツを入れシルエットを作るところ、フロントダーツ無しの前身、後身の2枚で、同等のシルエットを作り上げるというのが“凄い”ポイントになります。
同じく二面体で作るアメリカナイズされたスポーツジャケットは、ボックスシルエットなので難しい話ではありません (先ほど寸胴でよければ1枚でも出来ると話しました) 。
ダーツの基本的な考え方は、ダーツを取った位置 (切替え位置) でその分量だけ立体的になるというもの。
フロントダーツを取らなければ前身に立体感は“通常”生まれません。
しかし、スーツであれば、胸からウエストにかけた立体感を出したいです。
どうするのか??というと、、、
脇でとったダーツ分量をアイロンで前側に持ってくるという“クセ処理”をおこない解決させます (簡単に書いていますがクセ処理は技術が必要で、どこの工場でも出来るものではありません) 。この処理によって前側にも立体感が生まれ、シルエットを作りあげる事ができます。
“ダーツは傷である”という洋裁の一つの考え方からいうと、非常にテクニカルで上等な仕立てといえるのがフィレンツェモデルです。
見た目の部分でいうと、ダーツや切替え線の硬さが生まれない事で、柔らかい包み込むようなシルエットを作り上げることができるのが優位な点です。
サンプルはボタンホールも手縫いで仕上げました
こちらのサンプルのスーツは、アルチザンなイメージを強調させる為、ボタンホールを全て手縫いで仕上げてもらうという贅沢な仕上げにしました。
手縫いのボタンホールは、ミシンで仕上げた物よりも立体的で味わい深い意匠となります。
1か所 (1,760円 ※税込) と全部合わせると2万円近いオプションになりますが、それだけ手縫いの手間と時間がかかるのです。。。
今回、ダーツを消して、柔らかく美しいシルエットを作り上げるという、職人技光るフィレンツェモデルのスーツをご紹介いたしました。
一般的なデザインではなく、洋服好きにお勧めしたいモデル。マニアックなスーツをお求めの方は是非一度お問い合わせいただけますと幸いです。
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