SMITH WOOLLENS “ ORIGINAL SOLARO (オリジナル ソラーロ) ” を使ったオーダースーツ
オーダーを成功させる一つのポイントにどの店舗で誰に作ってもらうか?があります。パターンオーダーであったとしてもそれぞれの体型に合わせたスーツをお作りするのには、知識と経験、感覚がものをいいます。体型のクセに合わせて作るだけでなく、お客様がより格好良く見えることが大切です。
クラシックという基本のキはありますが、お客様に合ったバランスというのもあります。クラシックだから何でも正解としてしまうと一歩間違えればコスプレのように見えてしまう場合があります。
スーツ業界でよく言われるジャケットの袖口からシャツが1cm見えないといけないとか、着丈はお尻付け根位置など、あくまで一つの基準であってそれが全てではありません。
体格が太めで、手が短く胴が長い方が、上2つの基準通りにスーツを作ると、身頃から袖が生えているようなバランスの悪いものになります。スーツの語源である“一つ揃いの~”というのは全体の調和を意味していますが、ここにはサイズのバランスも含まれているように感じます。寸法には着心地に関係するものと、デザイン的な要素のものに分かれ、デザイン要素であれば格好良さの方を追い求めた方がよいではないかとEGRETでは考えています。
そして、サイズ設計の拘りだけでなく、生地選びも拘りをもっていただくと、オーダーが楽しくなります。どういったシーンでどういう見られ方をされたいか?普段よりどういった拘りをお持ちなのか?を突き詰めていくことで、洋服を着用する楽しみも増えてくるかと思います。
SMITH WOOLLENS “ ORIGINAL SOLARO (オリジナル ソラーロ) ”
今年も何着か自分用の洋服を作成していますが、今回のものは特に楽しみにしていた1着。ホームページの自己紹介欄ではスーツは30着保有していると書いていますが実はこれは虚偽でございます。ホームページを改修したのは3年くらい前の話でしたので、ここからさらに相当数増えております・・・(笑) 。
話し戻りまして今回の洋服はSMITH WOOLLENSのORIGINAL SOLAROシリーズから選びました。別名サンクロスといい、商標の関係でソラーロと呼べるのはこのシリーズだけです。
ソラーロは表裏で生地の見え方が異なる綾織りで、光の当たる角度によって表から見える緯糸の出方が変わります。クラシックなチョイスであれば経糸ベージュ、緯糸レンガ色のの配色ですが、前回同シリーズで作ったスーツが類似系統ですので今回はネイビー×ブルーで作成しました。
暗いところでは分かりにくいですが、光に当たるとヘリンボーン柄の色の見え方が変わります。生地単体では分かりにくいものも、洋服になると出てくる生地の奥行きの深さに、名作と呼ばれる所以を感じさせます。
同じヘリンボーンでも、前回分のベージュとは全く印象の違うものになりました。この時はクラシックな王道な生地を使いながら、芯地と裏地を排した軽やかでモダンな仕立てをするという、ひねくれたテーマで作成しました。
今回分はネイビーというベージュよりもタウンユースな色味。幅広いビジネスシーンでもお使いいただける色味ですので、より完成度の高い王道なスーツとしてご提案できればと思い、手縫いの工程を増やしています。
本襟掛けという手縫いで襟を付ける手法です。まず襟のクセ処理をおこない、地衿、上衿と手で据えていきます。これにより首への吸いつきが上がり着心地の上昇が見込まれます。その際にミシン縫製では難しいゴージラインにカーブを付けています。
また、よく見ていただくと衿の端に入っているのもAMFミシンによるステッチではなく、手で打っています。手で打つことで通常端から1~2mm幅で均一にはいるステッチが、0.5mm位置の不揃いなステッチになります。本来の10倍以上の時間をかけて、不揃いにするというものに価値を見出すのは洋服ならではでないでしょうか。
イセ込み量を増やしたマニカカミーチャや、手カンヌキなど随所にハンドワークを取り入れたディテールを採用しています。これは完全に私の趣味でございます (笑) 。
完成度の高いスーツが仕上がり、大満足な店主です。
洋服でも車でも時計でもご自身で拘ったものを身に付けたり、所有することは幸福度が高くなることだと感じています。
姫路のオーダースーツ店EGRETは、13日 (火) を除きお盆期間も営業しておりますので、是非拘りの洋服をご体感ください。
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