毛玉まみれ?『カセンティーノ』は FOX BROTHERS / フォックスブラザーズ の伝統生地です
こちらをまずご覧ください。モケモケとした質感から、毛玉まみれでただのボア素材にしか見えないかもしれませんが、実はこちら“カセンティーノ”という伝統ある素晴らしい生地なのです。
主にコート用の生地ですが、スポーツジャケットやベストとしても使えるカセンティーノの生地の秘密を今回は深堀りしていきます。
カセンティーノへの興味が少しでも深まっていただけますと幸いです。
CASENTINO (カセンティーノ) の歴史と特徴
カセンティーノはイタリアに流れる谷の名称で、この地域で作られる伝統生地の名前にもなりました。生地を作るには美しい水が必要なため、生地の名称にはしばしば地域にちなんだものが付けられます。
カセンティーノの生地の特徴は、見たまま、イメージそのまま、この独特な毛玉のある質感です。
決して着用し過ぎて・摩擦を与え過ぎて、このようになったわけではもちろんありません (笑) 。
ナッピングウールと呼ばれ、フランネル生地と同じく表面に加工を施すことで、毛玉まみれにさせています。なぜこのような加工を施すのかというと、もともとハンティングや羊飼いに向けて作られた生地であったことに由来します。
もし、綺麗なサラッとした薄い生地で、山や森の中に入って作業をしたらどうなるでしょうか?
枝葉に引っかかって傷が出来たり、破れたりする姿が容易に想像できます。傷ができるなら最初から毛玉のように毛足をカールさせ目立たないように・破れないよう厚い素材で、そんな先人の想いが込められカセンティーノは作られました。
スポーティな性格を持つ生地で、貴族階級の方からも愛される伝統生地はイタリアの伝統的な仕立屋を中心に現在でも常備されています。
英国のフォックスなのに、イタリアの伝統生地?
そんなカセンティーノを展開させている生地ブランドは有名どころで2社あります。
(英)フォックスブラザーズと、(伊)カチョッポリ。
どちらもイタリア・トスカーナにあるカセンティーノに特化した工場に織ってもらっています。
フォックスブラザーズはミル (織元) で自社で織っているのではないの?という方、実はカセンティーノのような特殊生地を織る場合は、自社だけでは難しいのでマーチャント (商社) としての編集もおこなっています。
職人気質なフォックスブラザーズだからこそ、英国製だけに捉われず、イタリアでしか作れない伝統生地は現地で織ってもらい最高級の物を目指す姿勢が垣間見えます。
洋服の最初の印象は生地によるものが大きく、カセンティーノで仕立てられた洋服はナッピングウール自体の存在感をそのまま受け継ぎます。
厚みとふくらみがあり、保温性が高く冬の本格コートとして十分な機能性と、洋服としての仕立てを映えする生地で、洋服好きからの高い支持もうなずけます。
フォックスブラザーズが受け継ぐカセンティーノ
伝統的な生地だからこそ、現代で着用しやすい編集をしているのが、フォックスブラザーズです。
カセンティーノは色鮮やかな生地の物が多い中 (一般的にはブックレット左側のオレンジやグリーンといった) 、ブラック、グレー、ネイビー、ブラウンというオーソドックスな色味でも織り上げています。
基本的には、ポロコートやラップコートといったスポーティなアイテムに使われることが多いですが、落ち着いた色味の物であればチェスターコートとの相性も良くなります。
現代の日本ではこれを着て、狩りや羊飼いの仕事をすることはまずありませんが、カジュアル化が進むビジネスシーンにおいてアクティブに着てもへこたれない現代的な洋服に仕立てあがる素晴らしい生地になります。
兵庫・姫路エリアで、カセンティーノのオーダーコートをお探しの方は是非一度お問い合わせいただけますと幸いです。
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