【仮縫いの意義】パターンオーダースーツにおける仮縫いはパフォーマンスなのか?
本日はスーツの小ネタ。
オーダースーツにおける仮縫いの意義についてご紹介してまいります。仮縫いを付けたらフルオーダーなのか?については過去ご紹介しており、最下部にリンクを付けておりますので合わせてご覧ください。
さて、一言でオーダースーツと言ってもやっている内容は様々です。
大きくフルオーダー、パターンオーダーなんて分けられ方をしており、この違いは作成のプロセスにあります。フルオーダーは本来、お客様の採寸データをもとに背中心線からなるパターンを引いていく作業から始まります。変わってパターンオーダーは有り型と言われるベースの型紙があり、そこからお客様の身体に一番合うパターンを修正していき身体の特徴に合わせていきます。パターンオーダーでも数値しか調整できないもの、制限があるもの、特殊な補正が出来ないものなど、店舗により様々です。
(※因みにイージーオーダーとはパターンオーダーの事であり、日本にしかないジャンル分けだったりします。)
フルオーダー、パターンオーダーどちらにも共通して言えるのが、実際に仮の服を着用をしていただく事にあります。採寸したものを形にしたからといきなり完璧にフィットする事は難しいですし、お客様のイメージとの相違も生まれやすいです。その為フルオーダーの場合であれば仮縫い、中縫いといった仮り合わせをすることで身体にフィットさせ、お客様のイメージとのギャップを埋めていく事となります。
パターンオーダーでも採寸時にサンプルの洋服を着用していただく事がこの工程に当たります。
過去、写真をもとに数値を出してスーツが作れるというWEB完結のサービスがありましたが、これがうまくいかなかった原因は仮の服を合わせる工程が無かったからです。
パターンオーダースーツの仮縫いはパフォーマンス?
本日の本題であるパターンオーダーにおける仮縫いについて。
我々の業界では、『パターンオーダーでの仮縫いはパフォーマンスである』なんて言われる事もあります。サンプルの洋服を着用してもらっているのにさらに仮縫いをすることはお客様の納期と費用がかさむ事に繋がるからという主張です。
これは、サンプルの洋服がお客様の体型に合っているという条件下においては正しい場合が多いです。身体に合っているサンプルを着用しているのに、補正修正がうまくできないのは採寸者の責任が大きいからです。
しかし、サンプルの洋服が合わない場合は話が変わってきます。
身体のバランスがサンプルから大きく外れれる場合、基準よりも数値を大きく調整する必要があります。身体に合わせて着心地が良いものを作ることはそれほど難しくありませんが、それが格好良いかどうかはまた別です。
某セレクトショップの方がどこかで語られていましたが、イタリアの靴ブランドが初めて日本に来てオーダー会をした時に、こぞってお洒落な方がオーダーをしに来ました。しかし、実際に仕上がってきたのは、日本人の足の形に合わせ過ぎてコッペパンのような格好悪い靴になってしまったと。意思疎通がうまくできていなかったことと、身体に合わせることと格好良いとはまた別だという話です。
全体のバランスを確認する作業である仮縫いを挟むことにより“格好良い洋服が作りやすくる”という事がパターンオーダーにおける仮縫いの意義だと考えています。
当店でもフルオーダーの場合は仮縫いが付いており、パターンオーダーでも必要に応じて仮縫いをご提案する場合があります。
姫路のオーダースーツ店EGRETでは、どういう洋服がお客様にとってベストなのか?を考え、洋服をお仕立てしております。兵庫県姫路市で拘った洋服をお探しの方は是非一度お問い合わせいただけますと幸いです。
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