【あれ?】クリーニングに出したスーツのラペル (下襟) がペシャンコに・・・。簡単な改善方法を洋服屋が解説します。
スーツのクリーニング問題は洋服好きの中ではよく議論にあがるもの。
スーツをクリーニングに全く出さない派閥の方もいらっしゃいますが、私は汗っかきなのでシーズン終わりに一回はクリーニングに出した方がカビが生えたりせず良いのではないかと考えています。過度なドライクリーニングは特に生地を傷めて風合いを損なわせるので出し過ぎは絶対にNGです。
水洗いをしてくれるクリーニング店があり、ドライクリーニングよりも傷みにくいのですが、以前利用した時は1着1万円位したので、メンテナンス費用としてバランスが難しいところです。
クリーニングを出す前提でブログを続けてまいりますと、特によく起こるのが仕上がりのアイロン問題です。スーツやジャケットのラペル(下襟)の立体感が損なわれペシャンコになっている状態は良く見ます。本日のブログではペシャンコ状態をアイロンで簡単にできる改善方法を解説してまいります。
先日、家から近いクリーニング店から戻ってきた私のジャケットがこのような状態でしたので、ブログネタに活用しております (笑) 。
これはアイロンが上手くいっていません。
ウールリネン生地なので、全体のシワ感はこういった風合いなのですが、右身頃 (向かって左側) のラペルのペシャンコ具合はあまり綺麗ではなく、左身頃に関してはさらに問題です。ラペルの返り位置を間違えており、3つボタン中掛けで本来なら真ん中のボタンに返り位置が設定されるところ、一番上のボタンにされ、何故か左右非対称に仕上がっています。
左右非対称になることはほとんどないにしろ、仕上げのアイロンで間違いが起こり、一番上に返り位置が設定されることはたまーにある事かと思います。
直したらよい事なので私はあまり気にしません。
本来、アイロンをかける方が洋服の構造を知っていればこのような事は起きません。ジャケットは身頃と見返しを中表にして縫われ作られます。その際、裏側にくる布が表から見えないように、数ミリ程度“控える”必要があります。
下画像のボタンホール上あたりを良く見ていただくと、返り位置よりも上に設定されている所は、見返しが数ミリ見えているのが分かります。ここはラペルが返った際に身頃の布の端が見えないようにするためです。反対に返り位置よりも下の部分は、身返しの布が控えられ表からは見えないようにされています。
つまりどこでラペルが返るかは、この“控え”の位置を見る事で分かります。
ここから直し方です。
ラペルがペシャンコになる原因はプレスの当て過ぎです。ちゃんと設計されたスーツであれば、アイロンをここまで当てる必要がありません。
なので、線をアイロンで消してしまいましょう。
ラペル位置が間違った右身頃です。一番上のボタンホール位置に折りジワが入ってしまっています。
上衿とラペルに掛かる部分だけ残しておいて、その他は消してしまいましょう。
最後にトルソーにかけたり、自分で着用して、ラペルがたちすぎていると感じれば、ラペルの中ほどの部分を手で少し押して落ち着かせれば完成です。
いかがでしょうか?綺麗にラペルがロールして美しいですね。
折れた線をアイロンで消すだけで、本来の立体感を取り戻す事が出来ます。
ラペルの返りはジャケットで一番目立つ部分と言って過言でありませんので、クリーニングから戻った際に立体感が甘いと感じれば是非お試し頂ければと思います。
その他、アイロンの小ネタブログでこちらもお勧めです。
【格好良く装うため】スラックスのクリース線が消えてもクリーニングに出さずメンテナンスをする。
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